(09年6月11日)
◆学芸員補佐 ドミニク・デンデゥーベン
第1次世界大戦(1914〜18年)にまつわるイーペル市と近郊の歴史を紹介している。世界各地から集まった約50万人が一帯で命を落とした。
15年4月22日にはドイツ軍が毒ガス兵器による世界初の大規模攻撃を決行し、800〜2000人が犠牲に。イーペルの名は、「化学兵器の導入」といった悲惨な出来事の同意語になった。
1998年、中世の織物取引所を改築して開館した。建物自体が戦争による破壊と復興の象徴だ。近年、ベルギーや英国の王室関係者、オーストラリア首相、広島市長らも来館。21万5000人を超える年間入館者の半数以上を25歳未満が占める。
館内では兵士、看護師、地元住民ら、さまざまな視点で第1次大戦の実態を伝える。来館者はカードを渡され、戦時中イーペルにいた特定の人物と自分を重ね合わせながら見学する。
映像や音響とともに4言語で説明するタッチパネル式画面を設置。列強各国による軍事同盟や新技術の戦争への影響、戦時下の人々の生活、捕虜や50カ国以上から集められた労働者の姿を紹介。毒ガスマスクや資料、悲惨な経験を詠んだ詩も展示している。
14〜25歳が対象の教育プログラムがあり、周辺の墓地や記念碑の案内も行っている。戦争の本質を問い、平和の発信に力を入れる。「平和博物館」とみなされるゆえんである。
住所 Grote Markt 34 B-8900 Ieper, Belgium
電話 +32ー57ー239ー220
ホームページ http://www.inflandersfields.be/
休館日 12月25日、1月1日ほか(11月中旬〜3月は月曜休館)
入館料 8ユーロ(約1100円)、7〜25歳1ユーロ、7歳未満無料
(2009年6月8日朝刊掲載)
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博物館入り口には、世界大戦を予見した英作家H・G・ウェルズの言葉がある | どの来館者も、第1次世界大戦中にイーペルにいた特定人物の名前が書かれたバーコード付きのカードを手渡される | 人類史上初めてガス攻撃を受けた場所として、館内ではガスマスクや関連資料を展示 |
イーペル周辺の墓地にある様々な墓石のレプリカとともに、野戦病院の様子も再現。大半の戦没者共同墓地は、野戦病院の跡地にある |