(11年1月21日)
◆館長 高橋武智
1949年に出版され、ベストセラーとなった戦没学生の手記「きけ わだつみのこえ」を契機に、日本戦没学生記念会が翌年に発足した。当初、関係者の間に戦没学生記念館を設立しようとの希望があったが、朝鮮戦争勃発(ぼっぱつ)間近の状況で、会が反戦運動へ傾斜したのは避けがたいことだった。
学徒出陣から半世紀の1993年、会は記念館建設の基金募集を発起し、実を結ぶまでに13年を要した。1400人の拠金者を得て本館がオープンしたのは2006年12月1日のことである。
「わだつみの悲劇を繰り返すな」との初志を受け継ぐ本館は、戦没学生の遺念と不戦、反戦の志をこれからの世代に伝承していくことを目的としている。
遺族から寄託された戦没学生の遺稿や遺品を、あの戦争の犠牲となった国々の民衆の体験ともつきあわせられるよう、時間を追って展示している。日本人学生より一足遅れて出陣させられ、数奇な運命をたどらざるをえなかった「朝鮮人学徒兵コーナー」もある。規模こそ小さいが、意味は大きいと考えている。
時間とともに戦争体験は遠のく。学業半ばで戦陣にたおれた学生たちと同年齢の学生諸君、それより若い高校、中学生の皆さんの来館を切に希望している。
最後に、本館のような私立私営のミュージアムが継続するためには財政問題に直面せざるをえない。志ある方のご支援をお願いしたい。
住所 東京都文京区本郷5丁目29-13 赤門アビタシオン1階
電話 03−3815−8571
ホームページ http://www.wadatsuminokoe.org
開館日 月水金曜の午後1時30分〜4時。祝日や年末年始、夏季は休館
入館料 無料
(2011年1月17日朝刊掲載)
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「きけわだつみのこえ」の序詩 | 展示中の戦没学生の遺稿・遺品 | 戦没学生の遺影 (撮影/ 津布久 智) |
戦没朝鮮人学徒兵の関係資料 | 大学生グループへの見学前の展示説明 | |