(09年10月 5日)
◆学芸主幹 園原謙
沖縄県は、アジア・太平洋戦争末期の1945年3月から約3カ月間、日米最後の決戦場となった。飛行場建設や陣地づくりに県民が総動員され、住民を巻き込んだ激しい地上戦を展開。住民9万4千人のほか、地元や県外出身の軍人、米兵ら計20万656人が亡くなった。
この史実に基づき、住民の視点から沖縄戦を追体験し、戦争の愚かさや醜さ、平和の尊さを学ぶため、沖縄県は75年6月、都道府県立機関では国内初の平和博物館として資料館を開館。2000年に規模を拡充し、移転新築した。
住民の多くが着の身着のままで戦場をさまよった沖縄戦を伝える資料はほとんど残っていない。人々が忘れ得ない、また、決して癒やされることのない戦争体験の証言を展示物として位置づけ、沖縄戦体験者の「いのちのことば」を展示の中心に据えている。展示は、1872年の「琉球処分」から1972年の沖縄の祖国復帰までの歴史を紹介。「沖縄戦への道」「地獄の戦場」「証言」など5テーマに分け、沖縄戦の実写(13分間)も上映している。
資料館に隣接する「平和の礎(いしじ)」は、1995年に県が建立した。国籍や軍民の区別なく、アジア・太平洋戦争で犠牲となった県出身者も含め、24万余の戦死者が刻銘されたモニュメントだ。資料館とともに沖縄戦の実態に向き合うことで、平和の空気が心に迫る。
住所 沖縄県糸満市摩文仁614の1
電話 098-997-3844
ホームページ http://www.peace-museum.pref.okinawa.jp/
休館日 12月29日〜1月3日
入館料 大人300円、小学生〜大学生150円(団体割引有り)
(2009年9月21日朝刊掲載)
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