パキスタンも地下核実験強行 |
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98/05/29
【イスラマバード28日共同=長谷川健司】パキスタンのシャリフ
首相は二十八日、同国が西部バルチスタン州で同日午後三時二十三
分(日本時間同七時二十三分)、初の地下核実験を実施したと発表
した。
敵対するインドが今月十一、十三両日、二十四年ぶりに計五回の 核実験を行い、事実上の核保有国宣言を行ったことへの対抗措置。 核開発能力を誇示し、インドをけん制するのが狙いだ。
これにより南アジアでの軍事的緊張が一段と高まるのは必至。両
国の核軍拡競争がエスカレートし、イスラエルや朝鮮民主主義人民
共和国(北朝鮮)などの「核疑惑国」に連鎖反応を引き起こす恐れ
もある。
両国で相次いだ核実験によって、包括的核実験禁止条約(CTB T)など国際的な核管理体制の破たんがあらためて浮き彫りとなっ た。クリントン米大統領は同日、パキスタンへの制裁発動を発表す る。
シャリフ首相らによると、西部バルチスタン州チャガイの核実験 場で二十八日午後三時二十三分(日本時間同七時二十三分)、五つ の核装置爆発実験を行った。イスラム教国で核実験を行ったのは初 めて。
シャリフ首相は会見で、核実験の理由の一つとして「日本が過去 に受けた(広島、長崎の原爆投下の)二の舞いになりたくなかっ た」と述べた。
インドの核実験後、パキスタン国内では対抗核実験を求める強い 世論が起きたが、シャリフ首相は国際社会のインド制裁や、実験を 自制した場合の米国などからの軍事、経済支援効果を見極めてい た。
しかし、対インド制裁は米国、日本などだけに限定された上、米 国からも十分な安全保障措置を得ることは不可能と判断したとみら れる。
またインドが、パキスタンと係争中のカシミール地方の帰属問題 で「核保有国として、断固たる措置を取る」などと強硬発言を繰り 返したことから、パキスタンではここ数日インド脅威論が一層高ま り、首相に核実験の早期実施を促す圧力となった。
パキスタンに対する国際社会の反発は必至。パキスタン最大の援 助国である日本は、新規円借款の凍結などインド同様の厳しい制裁 を科す方針。
外国からの援助が国家予算の三、四割を占めるパキスタンは核実 験の代償として経済的苦境に陥ることが予想され、同国の経済を事 実上支える国際通貨基金(IMF)などが制裁に加われば、国家経 済が破たんする恐れもある。
パキスタンは一九四七年、英植民地からインドと同時に分離・独
立。インドとはカシミール帰属をめぐり三度の戦火を交えた。今年
四月には中距離ミサイル「ガウリ」の発射実験を行ったことが引き
金で、両国間の緊張が高まっていた。