'13/11/26
子牛価格高騰で肥育農家悲鳴
肉用子牛の取引価格が中国地方で高騰している。10月の平均は1頭が約48万円と1年前より26%上昇。繁殖農家が高齢化で減少する中、口蹄(こうてい)疫や東日本大震災の影響で母牛が減り、全国で子牛が少なくなった。肥育農家は高い飼料代とのダブルパンチに悲鳴を上げる。
「ここまで子牛の価格が上がるとは想像できなかった。今の相場では利益が出ない」。広島県熊野町で約110頭の肉牛を肥育する馬上幸治さん(38)は、経営に頭を悩ませる。
肉牛の生産コストに占める子牛の購入費の割合は半分以下が理想だが、今や6割に達する。輸入飼料は価格が高止まり。円安や、トウモロコシのバイオエタノールへの利用が海外で広がった影響とみられる。
牛肉の相場は回復傾向にあるものの、輸入牛肉との競争もあり、肥育農家はコスト上昇分を販売価格に上乗せしにくい。馬上さんは「出荷する肉牛の体重を増やして売価を上げたい」と話す。
独立行政法人の農畜産業振興機構(東京)によると、5県の子牛(黒毛和種)の取引価格は昨夏から上昇。ことし10月の平均は1頭47万7971円だった。県別は島根が最高の50万957円で、島根と山口(48万1431円)が昨年より約3割上がった。広島(46万4326円)岡山(46万1773円)鳥取(48万1030円)は、いずれも約2割上がった。
肉牛の産地の宮崎県で2010年に口蹄疫が発生し多くの肉牛が殺処分された。翌11年には有数の産地、東北地方が被災。この結果、母牛が大きく減り、産まれる子牛も少なくなっている。
繁殖農家は長期的に高齢化で廃業が相次ぐ。中国5県では2月時点で3067戸と10年間で46%減った。
各地の市場は「争奪戦」の様相。島根県農畜産振興課は「全国で子牛が不足しているため、九州などから購買者が訪れている」と説明する。農畜産業振興機構は「牛肉の需要が高まる年末にかけて、相場はさらに上がる」とみている。
【写真説明】牛舎で子牛の様子を見る馬上さん(広島県熊野町)