■ 国連軍縮大阪会議を振り返って ■■■ | ||||||||||||||||||
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2003/08/25
平和憲法広めよ 地元教諭が訴え 国連が昨年まとめた「軍縮教育に関する報告書」のテストケースとなった軍縮会議初の「軍縮・不拡散教育セミナー」。大阪市内の小中高教諭約五十人が加わった会議参加者との討議は、活発なものとなった。 報告書をまとめた専門家の米モントレー国際大不拡散研究センター長のウィリアム・ポッター氏とニュージーランド人で国際平和ビューロー副会長のケイト・デュース氏が最初に、大学生や地域住民を対象に行ったそれぞれの軍縮教育実践について報告した。 「軍縮・不拡散教育に決まったやり方があるわけではない。世界の核状況や紛争地帯の現実などを学び、それをどう他の人びとに伝えていくかが大切」とポッター氏。ロールプレイで相手の立場に立って考えるなどの訓練が「若い人たちの安全保障への意識を変えていく」と話しかけた。 デュース氏も「多様な世界の人びとが共存し、平和に生きていくには、子どもから大人まであらゆるレベルでの軍縮・不拡散教育が必要だ。広島・長崎の原爆資料館なども貴重な学習材料となる」と、被爆地の役割の大きさを指摘した。 □ □ □ 会議席に座った教諭からは、広島への修学旅行を通じた自らの平和教育実践の紹介とともに、教える難しさや内容について注文も出された。 「イラク戦争を正当化するような情報がテレビなどを通じて垂れ流されているが、何が正しい情報かを子どもたちに教えるのは容易ではない」「教員自身も紛争に苦しむ現地を訪ねて、世界の現実を知る必要がある」「広島・長崎の放射線後障害と同じように、世界の放射線被害者の実態を知って、教えることが大切ではないか」…。 ジェンダーの観点から軍縮を説いた、英国に本部のある民間組織インターナショナル・アラート政策顧問のヘレナ・バスケス氏はこう主張する。「これまで安全保障問題を扱い、政策決定にかかわったのは男性が中心。命をはぐくみ、暮らしを支える女性の視点が生かされれば軍事予算が大幅に削減され、教育や医療など暮らしの向上に向けられるだろう」と。 教諭らからは「日本には世界に誇れる平和憲法がある。その理念こそ、政府は率先して世界に広めるべきだ」「軍事予算は米ロに次いで世界で三位。平和憲法や軍縮教育の理念と逆行するのでは…」と、日本政府の外交や安全保障政策に注文や疑問が出された。 専門委員の一人として国連報告作成にも携わった外務省軍備管理・科学審議官の天野之弥氏は「核廃絶の理想を掲げながら、同時に日本の安全を守らなければならない。日本は核兵器国にならず、軍事力も最小限にとどめている」と答えた。 □ □ □ 「非武装・軍縮・非暴力」の精神で活動を続ける世界宗教者平和会議日本委員会の主要メンバーで、薬師寺(奈良)管主の安田暎胤(えいいん)氏は、政府の立場に反論するように穏やかに言った。 「一九七〇年に京都で第一回会合を開いたとき、ノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士の基調講演のテーマは『軍備なき世界の創造』だった。宗教者の提言はとかく理想主義で現実性がないという非難は誤っている。理想こそ人類が実現すべき目標であり、理想に向かって現実的な努力をすることなしに人類の未来はない」 テロや報復戦争、核保有への動きなど会議でも表出した混迷を深める世界の現状…。安田氏の言葉は、参加者や聴衆に深い感銘を与えた。 《軍縮教育に関する報告書》2000年の国連軍縮諮問委員会で、核軍縮の停滞を打破するためには、若いときから教育に取り組む必要があるとの問題提起があり、「軍縮・不拡散教育」の促進方法を研究するよう求める決議案が採択された。それを受け、メキシコ、スウェーデン、日本、ニュージーランドなど10カ国から10人の専門家が任命され、2001年から翌年にかけて、政府専門家会合を計4回開催。「各国に軍縮教育の促進を求める」勧告を含んだ「軍縮教育に関する報告書」をまとめ、昨年8月に国連事務総長に提出した。
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