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'13/11/27

有福温泉荘で感謝の三味線



 12月末で46年の歴史に幕を下ろす江津市の被爆者向け宿泊施設、原爆被爆者有福温泉療養研究所「有福温泉荘」で26日、施設を利用する下野勝己さん(71)=広島県熊野町=が、残り1カ月となった施設への惜別の思いを込めて、三味線の演奏会を開いた。

 下野さんは3歳の時、原爆投下された翌日に、呉市の自宅から両親と広島市の親戚を尋ね入市被爆した。配管業の経営を60歳で辞め、6年ほど前から年に数回、温泉荘を利用している。三味線は7年前から始め、熊野町の福祉施設などで演奏。有福温泉荘では3回目となる。

 この日、ロビーに集まった約20人を前に、自作の「有福音頭」を初めて披露。「有福湯の町 こりゃ神楽町よ」「通いなれたる せせらぎ道を」などの歌詞が笑顔を誘った。7曲を演奏し「炭坑節」や「ふるさと」は全員で合唱した。

 下野さんは「施設閉鎖は寂しいけど、しんみりとせず、にぎやかにできてよかった」。演奏に合わせて飛び入りで踊った利用者の村上ツモルさん(80)=尾道市因島田熊町=は「20年近く通い、最後にいい思い出ができた」と喜んでいた。

 温泉荘は1967年、広島原爆障害対策協議会が開所。被爆者の高齢化や施設の老朽化で利用者が減り、昨年11月に閉鎖が決まった。来月26日で営業を終え、年明けから建物を取り壊す。広島市の社会福祉法人が、跡地に被爆者向け宿泊施設と特別養護老人ホームの建設を目指したが実現しなかった。

【写真説明】有福温泉荘の閉鎖を惜しみ三味線を弾く下野さん




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