'13/11/27
全盲テニスで酒井さん日本一
岩国市平田で鍼灸(しんきゅう)院を開く酒井幸春さん(59)が、17日に埼玉県であった日本ブラインドテニス大会のB1クラス(全盲)男子の部で初優勝を飾った。視力を失って30年。「これまで支えてくれた人のおかげ」と喜んでいる。
大会にはランキング上位の12選手が出場した。酒井さんは準々決勝でランク1位の選手と対戦。6―4で勝つと、そのまま初の頂点まで駆け上がった。「サーブでリズムがつくれた。一秒でも長くコートにいたいと思ったら優勝まで行った」と無欲の勝利だった。
酒井さんは鉄工所で働いていた29歳の時、作業中の事故で両目を失明した。広島県立盲学校(現広島中央特別支援学校)に通っていた1998年、同級生からブラインドテニスの教室に誘われ、初めてラケットを握った。
コートは縦13・4メートル、横6・1メートルで、ネットの高さは0・8メートル。スポンジの中に鈴を入れたボールを使用し、音を頼りに打ち返す。全盲の場合、3バウンドまでOKで「跳ねたり曲がったりするボールを打つのが楽しく面白い」。現在は岩国市のチーム「ブレイラーズ」に所属し、市福祉会館(麻里布町)で練習を重ねている。
大会会場では妻のすみ子さん(57)が声援を送った。酒井さんは「目の見える人生と、目の見えない人生を生きてきた。寄り添ってくれた人がいるから、ここまでやってこられた」と、周囲の支えに感謝する。今後も仲間に囲まれながらテニスを楽しむつもりだ。
【写真説明】ブレイラーズの仲間に優勝を報告する酒井さん(左から4人目)。右端は妻のすみ子さん