≪取材を終えて≫プロの物書きではない人たちが自身の家族史について本を出すのは、その意志に加えて機が熟すことも必要だと思った。生き方そのものだとも言える。
むろん、出版物としては課題も多い。日記など元原稿との照合が十分でない、元原稿の誤りを見逃している、などの編集上の問題。「小説」と銘打った場合、事実と創作の線引きが読者に分かりにくいものもある。
出版までに多大なエネルギーを費やしている著者、編者には酷な注文だが、引き続き元原稿を印刷物にし、記録として残してほしい。私家版でいいと思う。そして、さらに多くの人が、同じように家族の記録を残してほしいと願う。(佐田尾信作)