関連ニュース
「原爆症」控訴にじませる '06/8/7

 ▽被爆者から要望聞く会で厚労相 基準の妥当性主張

 広島市の平和記念式典に参列した川崎二郎厚生労働相は六日、中区であった「被爆者代表から要望を聞く会」で、国が全面敗訴した広島地裁の原爆症認定集団訴訟の判決について「分析に取り掛かった段階で見解は容赦してほしい」と述べる一方、判決が一応の参考資料とした国の認定基準は「国際的にも認められたシステムだ」と反論した。大阪地裁判決に続き、控訴する可能性をにじませた。(林仁志)

 聞く会には、二つの広島県被団協や県朝鮮人被爆者協議会など七団体の代表や役員が出席。被爆者側は、原告四十一人全員を原爆症と認めるべきだとした四日の広島地裁判決を踏まえ、放射線被曝(ひばく)線量の推定方式「DS86」の適用など審査のやり方を見直すよう要望。控訴見送りと、大阪地裁判決に対する控訴取り下げを訴えた。

 これに対し、川崎厚労相は「判決は国の主張とかなりかけ離れているのは事実」と厳しく受け止めている姿勢を示した上で、今後の対応については「関係省庁とも協議して慎重に進めたい」と明言を避けた。

 ただ、争点の一つだった認定基準に関して「科学的知見に基づいたものと考えている。(原因確率という)新しいルールも作っている」と一貫して妥当性を主張した。

 さらに、「国の考えの細かい部分は大阪高裁の段階で出てくる」などとして、大阪地裁判決への控訴を取り下げる考えはなく、当面は原爆症認定集団訴訟での争いを続ける意向も暗に示した。

 このほか、北朝鮮の被爆者援護については、日本人拉致やミサイル発射など、さまざまな問題があると指摘。「被爆者の問題は重要だが、この問題だけ踏み込むわけにはいかない。まずは六者協議再開だ」との考えを示した。

【写真説明】被爆者団体の代表(右列)から要望を聞く川崎厚労相(左列手前から2人目)ら


MenuTopBackNextLast