広島地裁の原爆症認定集団訴訟で、病をおして裁判を闘う原告たちを支えてきた「原爆訴訟を支援する会」は二日、公正な判決を求め、全国から届いた約千五百人の署名を広島地裁に提出した。届けた署名は、計四万五千三十三人分になった。
「国の認定制度そのものを問う闘い。勝ちたい一心」。束ねた署名を携え、弁護士らと地裁を訪れた支援する会事務局の有村洋介さん(64)は、力を込めた。「金目当てかと中傷されたり、家族の反対にあったりしながら裁判に踏み切った原告のうち十人が亡くなった。他の原告も病状が悪化している。これ以上、時間はかけられない」
この日出した署名は、五月の大阪地裁判決で敗訴した国が控訴したのを受け、六月十日以降届いた。被爆者団体など組織からではなく、個人レベルで家族や友人に呼び掛け、送られてきたケースが目立つという。
「原爆症認定は、被爆者の個人的問題という意識から、国の被爆者援護政策全体に関する大きな問題だと、周囲の認識も変わり始めた」と有村さんは分析する。
「原爆被爆者相談員の会」(舟橋喜恵代表)は、支援する会の構成メンバーとして、原告一人一人の陳述書作成などに携わった。「被爆者があの日からこれまで、どう生きてきたか。原爆被害とはいかなるものか。被爆者でない私たちが吸収し、伝えていく活動でもある」と舟橋さん。
支援する会世話人で広島平和会館で元原爆被害者相談所の相談員を務めた宮崎安男さん(77)も訴える。「原爆が使われたことで苦しんでいる被爆者が今ここにいる。訴訟の原告は被爆者であり、私たち人類」。全国の支援者とともに司法による「救済」を信じて、判決を待つ。(森田裕美)
【写真説明】2カ月足らずで全国の約1500人から集めた署名を携え、広島地裁に入る支援する会のメンバーたち
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