■世界各地に5000人 ◆ 現地の状況
世界各地で暮らす被爆者は現在、約五千人とみられている。移民 や植民地支配など複雑な経緯がそれぞれの在外被爆者の半生を左右
してきた。
うち、朝鮮半島、北米、南米の九カ国には合わせて約四千四百 人。日本政府が現地の被爆者団体の聞き取りなどで確認した。国交
のない朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を除き、国や広島、長崎 両県市が個別に支援策を実施してきた。
千人を超える被爆者がいる北米では一九七七年、健康診断がスタ ート。広島県医師会、広島市、国などが医師団を派遣し、初年度は
百六人が受診した。被爆者を日本に治療に招く事業も始まり、隔年 で続いている。
ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ペルーの南米 五カ国でも同様の援護策が八五年に始まった。広島、長崎両県と国
が隔年で実施している。
被爆者が約二千人と最も多い韓国では事情が少し異なる。八一 年、日韓政府による渡日治療が始まったが、八六年に韓国側が「自
国で治療できる」として打ち切った。
一方、韓国政府は基金拠出を日本政府に要請し、九〇年の日韓首 脳会談で海部俊樹首相が人道的支援として拠出を表明。四十億円を
原資に治療費の自己負担分と月額約一万円の現金給付が実現した。
北朝鮮とは国交がなく、今のところ政府間で合意した支援策はな い。日本政府は昨年三月、初の調査団を派遣した。平壌市に被爆者
の治療拠点、放射線医学研究所があるが、専門医や設備は不十分と される。
南米、北米、朝鮮半島以外にも、強制連行されて被爆した中国 人、東南アジアから広島に留学中に被爆した南方特別留学生のほ
か、海外に移った日本人の被爆者も点在している。詳しい実態は分 かっていない。
一時入国した後に出国した在外被爆者を集計した厚生労働省のデ ータによると、九六〜二〇〇〇年の五年間でオーストラリア、中
国、ポルトガルなど十八カ国・地域の被爆者が確認されている。外 国人と結婚して海外に移り住んだり、仕事で海外赴任したりしてい
る日本国籍の被爆者が多いとみられる。 |
日本に短期滞在し、被爆者健康手帳の交付を受けた後に出国した在外被爆者数
(延べ人数、厚生労働省データ、北米、南米、朝鮮半島を除く)
|
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
オーストラリア |
2 |
5 |
2 |
6 |
4 |
中国 |
4 |
5 |
4 |
2 |
2 |
香港 |
7 |
4 |
2 |
1 |
2 |
ポルトガル |
1 |
1 |
2 |
4 |
2 |
台湾 |
4 |
2 |
|
1 |
1 |
インドネシア |
1 |
|
1 |
3 |
2 |
フィリピン |
2 |
|
1 |
1 |
1 |
フランス |
|
1 |
1 |
2 |
1 |
ドイツ |
|
1 |
1 |
1 |
1 |
オランダ |
1 |
1 |
|
1 |
1 |
ベルギー |
|
|
1 |
1 |
2 |
スウェーデン |
|
1 |
1 |
|
1 |
メキシコ |
|
|
1 |
|
1 |
シンガポール |
|
1 |
1 |
|
|
マレーシア |
|
|
|
|
1 |
南アフリカ |
|
|
|
1 |
|
英国 |
|
|
1 |
|
|
ギリシャ |
|
1 |
|
|
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