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2000/4/22 |
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従来のルート外でも 中止求め連携する自治体 ○政府に憤り
一九九八年七月、青森県の米軍三沢基地で離陸中に炎上したF16戦闘機が、同町内への模擬対地攻撃訓練を計画していたことが昨年秋、明るみに出た。以前から町上空では低空飛行が繰り返され、不安が高まっていた。
交流会の前日、参加者らは、低空飛行の危険がクローズアップされるきっかけとなった早明浦ダムへの墜落事故現場を、本山町の隣、大川村で視察した。。この事故の報告書から、国内各地に低空飛行ルートが設定されていることが明らかになった。米軍機の飛来が続き、九八年八月に初の全国交流会を開いた広島県双三郡君田村は、中国山地を縦断するブラウンルートの下にあたっていた。 だが、「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」(三次市)の岡本幸信事務局次長は、状況の変化を感じている。「訓練場所が、従来のルート以外にも広がっている」 ○制限で合意 四国のオレンジルート直下にあり、今回の交流会を開いた本山町。墜落事故の前年には、米軍機の飛来が三百回を越えたが、昨年は五十七回にとどまった。代わりに、やや南の町村で、米軍機が目立ち始めた。 中国山地でもブラウンルートでの目撃は減り、広島、島根県にまたがる訓練空域「エリア567」で急増している。また、同様の「空域型」の訓練エリアがある群馬県渋川市の上空も、昨年の飛来回数は前年の一・八倍。今年はそれも上回る勢いだ。 以前は低空飛行のなかった山梨県の富士川沿いなどでも、昨年末から空母艦載機F14の機影がひんぱんに目撃されている。低空飛行に対する反対運動を考慮してか、米軍側も訓練場所を変えている、とみられる。 当初、低空飛行訓練の存在を認めていなかった外務省もスタンスを変えた。 昨年一月、「戦闘即応体制を維持するために必要」と訓練を正式に容認。そのうえで米国政府と▽原発や民間空港を回避し、人口密集地や学校、病院などに考慮する▽週末・祭日の訓練を必要不可欠なものに限定する―などで合意した。 ○秋に準備会 全国交流会では「合意は一定の前進だ」と評価する意見の一方、「休日にも堂々と訓練している」「密集地の上も飛ぶ」との声も相次いだ。参加者の一人で低空飛行問題に詳しい軍事リポーター、石川巌さん=神奈川県藤沢市=は「コソボやイラクなどの米軍の爆撃に国内の低空飛行訓練が生かされているという視点も必要だ」と強 調した。 九八年に米軍機の低空飛行で民間人二十人が亡くなる惨事が起きたイタリア。昨年四月から、訓練計画の事前告知や同国政府による承認が必要になった。日本政府は具体的な飛行訓練の内容について「米軍の運用の問題」との立場を崩さない。中止を求める自治体との隔たりは大きい。 「各地でばらばらに運動をやっていては、問題はなかなか解決しない」。全国交流会では、広島、高知、徳島、北海道から参加した六人の町村長らが呼び掛け人となり、全国組織の発足を決めた。早明浦ダム事故から六周年の十月十四日をめどに首都圏で準備会を開く。共同での要請行動や目撃情報の収集も検討しており、全国の自治体に、運動の輪を広げる予定だ。 |