中国新聞社

'98.11.21
国連と市民 近づける役

宮崎 安男氏
印パと平和交流を進める
広島市民の会世話人
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 みやざき・やすお戦前、朝鮮半島で生まれ、5歳の時に光市に引き揚げた。郵便局、電話局勤務の後、全電通中央本部執行委員、同中国地本委員長などを歴任した。1993年から原水禁代表委員も務める。69歳。
 踏み込んだ議論を

 過去、九回の国連軍縮会議のうち、三回が広島であった。会議に参加しての感想を率直に言えば、「期待外れ」の感はいなめない。せっかく被爆地で開いているのに、全会一致を原則とする国連軍縮委員会の延長のような議論だという印象を受けた。

 広島でいえば、会場となる国際会議場のすぐそばには、氏名が判明しない七万柱もの遺骨が眠る原爆供養塔がある。あの七万の遺骨が持つメッセージを、現代に生きる私たちはどう読み取ればよいのか。

 また被爆から半世紀以上を過ぎてもなお、正確な原爆被害の実態は明らかにされていない。そういう被害の深さ、残虐性をどう受け止めるのか。もっと踏み込んだ議論を展開してほしかった。

 まず現実見据えて

 国連軍縮会議を重ねていくことには、大変な意義があると考えている。国連の場を地域、さらに市民レベルへと引き寄せる役割を果たせるはずだ。要は、単なる場所貸しの会議にはしてほしくない、ということだ。あまり欲張らず、焦点を絞って議論を深め、何が今問題なのかを皆が分かるよう明確に示してほしい。

 今年、インド、パキスタンが地下核実験を強行し、核兵器使用の危機が常に存在することを見せつけた。今年の長崎会議を「使用は絶対許されない」という先制不使用の議論から、始められないか。理論でなく現実からアプローチし、理想に近付けてほしい。

 また「核兵器のない世界に向けて」というテーマを掲げるのだから、核兵器廃絶の大前提を明確に打ち出してほしい。国際司法裁判所(ICJ)で行ったような核兵器使用が国際法違反かどうかなど、具体的な議論を積み重ねるのも、一つの方法だと思う。

 交流など工夫必要

 今後、われわれ市民の側も、工夫が求められる。会議で市民が発言する場は限られている。もっと市民が日常的に核問題について語り合う場を広げ、だれを代表にして、何を発言するかも考える必要がある。

 「ヒロシマ」の名前が重いので、気軽に語れる雰囲気にないのかも知れない。思っていることを自分での言葉で語り合うような市民同士の交流を広げれば、軍縮会議と市民の行動に接点が生まれると思う。

 また8・6の平和宣言を見直し、市民の一年間の行動目標とする。翌年、前年の宣言で掲げた目標と現実がどうだったかを検証し、その年の目標を定めるといった試みもできるはずだ。その平和宣言の内容が軍縮会議の議論のたたき台になっていくようにすれば、広島、長崎で開く意義はぐんと高まると思う。

核なき世界へ 10回目の国連軍縮会議

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