▽広島の制作委が新作
爆心地をテーマにした映像作品を発信し続けている広島の産学官組織「爆心地復元映像制作委員会」(田辺雅章主管)が、過去の三作品を集大成し、きのこ雲の生成の様子をリアルに再現したコンピューターグラフィックス(CG)映像を盛り込んだ新作「爆心地〜ヒロシマの記録〜」(六十四分)を完成させた。
広島国際大専任講師の青木研氏(39)や地図学研究者の竹崎嘉彦氏(48)ら多くの専門家が協力、原爆投下前に米軍が撮影した航空写真を基に、被爆直前の爆心地周辺を立体化した。緑地や川、道路など領域別に彩色することで、現実感を加えた街並みに、きのこ雲がわき上がる様子を映像で描き出している。
「きのこ雲の生成メカニズムについて、各国の核実験のデータ収集や調査、分析を重ねた」(青木専任講師)苦心の作業で、原爆の強大な力を象徴するきのこ雲をリアルに表現し、六十一年前の「あの日」の実態に一層迫る内容になっている。
特に、地上から伸びるキノコの柄に当たる部分を詳細に調べた。その結果、地上約六百メートルの原爆さく裂点で高熱による上昇気流が生じ、ドーナツ状の雲が発生。同時に、衝撃波の揺り戻しなどで地上から雲が立ち上がり、ドーナツ状の雲の中を貫く形で合体し、キノコの形になることが分かった。
田辺主管(68)は「爆心地のタイトルにふさわしい作品がようやくできた」と説明している。(宮崎智三)
【写真説明】(上)原爆がさく裂。市街地を覆うようにきのこ雲がわき上がる(「爆心地〜ヒロシマの記録〜」から) (下)被爆前の市街地(「爆心地〜ヒロシマの記録〜」から)
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