▽歴史観の違い超えて
広島・長崎の被爆者の証言を、韓国や米国など七カ国出身の八人が日本語で朗読する劇「トンボが消えた日」がこのほど、東京都新宿区の早稲田奉仕園であった。原爆投下に対する歴史観の違いを超え、平和への願いを共に発信した。
都内で日英併記の情報誌を発行する中村里美さん(42)=東京都町田市=らが企画し、誌上で出演者を公募。台本は、中村さんが一九八六年、米国で被爆の実相を伝える「ネバー・アゲイン・キャンペーン」に参加した際に聞き取りした被爆証言を基に書き上げた。被爆五十年の九五年に東京と広島で初演。「六十年」の昨夏、七年ぶりに上演を再開した。
演じたのは米・韓のほか、中国、トルコ、スリランカ、ウクライナ、日本の八人。「水が欲しいよう」「なぜ被爆を隠して生きるの」。言葉をかみしめながら証言を朗読、時折涙ぐみ、声が途切れる場面も。昼、夜二回の公演で約百六十人が集まった会場からも、すすり泣く声が漏れた。
劇では、プロローグとして八人の出身国の戦争被害の歴史も盛り込んだ。「アジアでは、原爆が終戦と解放をもたらしたと思っている人がいる」などのせりふも語られた。
出演者は、三カ月間にわたり週一回けいこをし、七月上旬には広島を訪れて語り部から体験を聞くなどして準備を重ねてきた。米国出身の早稲田大留学生、ブライアン・ペリーさん(25)は「原爆被害の悲惨さを、世界はもっと知るべきだ。私も米で被爆者のメッセージを伝えていく」と話していた。(金崎由美、写真も)
【写真説明】被爆体験を題材にした日本語朗読劇を披露する各国の出演者たち
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