中国新聞
第5回世界平和連帯都市市長会議
広島・長崎 2001.8.4〜2001.8.9

被爆体験、人類の財産
―普及へ資料整理急ぐ―

 第五回世界平和連帯都市市長会議は六日、被爆者の証言を聞く会 や、二つの分科会を広島市中区の広島国際会議場で相次いで開き、 広島市での三日間の議論を終えた。

 被爆体験の普及がテーマの分科会では、体験を「人類共通の財 産」として広めていく考えで一致。海外から、原爆被害の実情を示 す出版物やビデオなどが入手しにくい現状が指摘され、資料のリス トアップやデータベース化を急ぐことになった。

 紛争の平和的解決について論じた分科会では、「国家に比べ人間 的な都市の力を生かした解決策が有効」との報告や連携して暴力を 防ぐ重要性を訴える意見が目立った。

 分科会に先立って、原爆資料館館長の高橋昭博さん(70)が被爆 体験を証言。「核兵器は絶対悪だ」と強調した。

 夕方には、海外五都市の市長らが、それぞれの平和メッセージを 読み上げた。アギアナーギリ市(ギリシャ)のニコス・タバキディ ス市長は「平和とは、貧困や不平等、人種差別と常に戦い続けるこ とだ」と都市連携の必要性を力強く訴えた。

 終了後に会見した秋葉忠利広島市長は「日常的に行動する組織を 目指す方向性が明確に、力強く打ち出せた」と述べた。

 八、九の両日は、長崎市に会場を移し、核兵器廃絶のため自治体 や市民が果たす役割や、地球環境問題などを討議する。

 ■平和市長会議分科会要旨■

 世界平和連帯都市市長会議が六日開いた二つの分科会は、「被爆 体験の普及」や「紛争の平和的解決」について、各都市の代表が自 分たちの取り組みや意見を活発に出した。ヒロシマの訴えを広め、 紛争を防ぐには、国家に比べ、住民に近い都市の役割が重要との指 摘が目立った。

 【被爆体験の普及】

 司会進行役の児玉克哉三重大助教授は「被爆者の体験は、すべて の人類にとって大きな意味がある」と体験継承の必要性を強調し た。マラコフ市(フランス)は翻訳した被爆証言が教科書に取り上 げられた例を紹介し、「被爆証言を冊子にして広め、国には教科書 に使うよう働きかけよう」と自治体に積極的な行動を取るよう訴え た。

 ネーピア市(ニュージーランド)やインパール市(インド)など は「国内で被爆の実装を示す資料を展示したい」「海外ではヒロシ マの資料が入手しにくい」との悩みが出された。広島市が、これに 答え、被爆証言や資料のリストアップやデータベース化を急ぎ、イ ンターネットで活用してもらうことを約束した。

 【紛争の平和的解決】

 司会進行役の最上敏樹国際基督教大教授は「紛争の予防と、平和 的解決ができる国際的仕組みをつくることが先決だと問題提起し た。

 ナント市(フランス)は、イスラエルとパレスチナの観光産業を 支援していることを引き合いに「紛争解決の方法として有効だ。国 家に比べ、人間的な温かい存在の都市の力を生かそう」と呼び掛け た。コモ市(イタリア)は「経済や技術支援など多角的なアプロー チで信頼関係を築くことが必要」と述べた。

 独立を求めるインド北東部の州が政府と武力闘争していることに 触れ、第三者介入を訴えたインパール市と、不要とするカルカッタ 市との議論が白熱する場面もあった。

 最上教授は「国際的には知られていない紛争の存在を知り、話し 合いができたのは大きな成果。都市が連携して、暴力を防いでいく ことも大切」と締めくくった。

(01/08/07)


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