'98/7/31 |
復活の井戸安眠の祈り
産みの親は、同区城山一丁目の酒販業水戸城治さん(76)。かつて、山のふもとにわいていた水が、相次ぐ宅地造成のため枯れてしまった。山の持ち主の水戸さんが、三十六メートルの井戸を掘り、わき水を復活させた。 この水は、地元の有志「茶臼山城址保存会」が管理する。だれにでも、無料で振る舞われるため、市外から水をくみに来る人も多い。廿日市市佐方の田中豪荘さん(32)もその一人。「この水で炊いたご飯の味は格別。子供の離乳食にも使っている」 井戸の近くには、原爆の犠牲者を慰める詩や句が刻まれた石碑が約三十基置かれる。どれも広島市内にあった被爆石。「このまま山に捨ててしまうのは、忍びない。後世に残したい」と、こちらも水戸さんが石碑として復活させた。
「安らかに 眠れと献ぐ 茶臼山の水」と彫られた碑文もある。作者である津江義美さん(88)は「この水を飲むときは、水を求めて亡くなった人たちの苦しみを忘れないでほしい」。碑文を前にそっと目を閉じた。
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