中国新聞社


'98/7/28

三世に託す平和の祈り

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こけむす岩の谷間を流れる升カ谷冷水。被爆三世の草川恵美さんが、原爆死没者慰霊費の前に供える
 広島市安佐北区白木町にわく「升カ谷冷水」は、平和記念式典の「献水」として長年使われている。だが、今年はこれまでと少し違う。町の栄養士草川恵美さん(22)が、被爆三世として初めて献水式に臨むからだ。

 草川さんは、祖母の末盛愛子さん(69)の悲痛な叫びが忘れられない。「胸のつかえを取って欲しい。そうしなければ、私の戦後が終わらない」

 その末盛さんは、爆心地から約二キロ離れた中区東千田町二丁目、広島電鉄の電停「電鉄前」(現在の広電本社前)で被爆した。

 友人を探すため、広島駅や紙屋町など歩くうち、顔や体が焼けただれた人たちに「水をくれ」とせがまれた。しかし、「水を飲ますと死ぬ」と聞いていた末盛さんは「ごめん」と、涙ながらに振り切った。

 今年の献水者は、升カ谷のある高南地区から選ばれることになった。「被爆体験を後の世代に伝えることが私たちの役目」と、末盛さんは孫の草川さんを推した。草川さんは、祖母の言葉が気になっていただけに、二つ返事で引き受けた。

 「祖母の願いをかなえたい。被爆三世として、平和の大切さを後世に伝える責任がある」。世代を越えた新たな平和の祈りが、水とともにささげられる。
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献水
 
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