首相、核廃絶で国際会議構想
'98/6/4
橋本龍太郎首相は三日午前の参院行財政改革・税制特別委員会で、インドとパキスタン両国の核実験を受け、核軍縮・廃絶に向けた「国際フォーラム」(仮称)の設置を提唱する考えを表明した。
外務省筋によると同フォーラムは民間有識者、個人資格で参加する政府関係者ら十数人で構成。日本のほか、核兵器保有国の米国、中国など国連安保理常任理事国五カ国に加えて印パ両国からの参加も働き掛ける。
七月にも日本で初会合を開き、数カ月以内に核廃絶に関する提言を求める。平岡敬広島市長が外務省に広島開催を要請したことを踏まえ、開催地を早急に決める。
日本は唯一の被爆国として国連総会に「究極的な核廃絶」を目指す決議案を提出しており、国際フォーラムを通じて核廃絶の実現に主導的な役割を果たす考えだ。地域安全保障の観点から十二日の主要国(G8)緊急外相会議で示す予定の「カシミール問題東京国際会議」構想と並ぶ具体的提案となる。
政府は印パ両国の核実験を受けて(1)核不拡散体制の堅持と核廃絶・軍縮(2)南西アジア地域の安全保障の確立―を今後の対応の軸に据えている。
首相は三日の参院特別委で、核廃絶問題は「日本にとって愚直なまでに真正面から取り組むべき性格のものだ」と強調。カシミール問題に関しては「G8が意味のある両国の対話を慫慂(しょうよう=誘導の意)するよう提起したい」と表明した。自民党の亀谷博昭氏への答弁。
▽開催地にヒロシマ名乗り
広島市の平岡敬市長は三日、外務省を訪問し、インド、パキスタンの核実験強行を受け、唯一の被爆国である日本政府が世界の核軍縮に向け先導的役割を果たすよう要請した。また平岡市長は、橋本龍太郎首相がこの日設置の考えを示した核兵器廃絶を目指す国際フォーラムの広島開催を求めていく意向を明らかにした。
平岡市長は、核兵器廃絶に向けた積極的な外交を求める橋本龍太郎首相あての要請書を、阿部信泰軍備管理・科学審議官に手渡し、「現状の核不拡散体制を組み直していくことが必要」と指摘。臨界前核実験を継続する米国、ロシアなど既存の核保有国の姿勢を印パ両国の核実験強行の背景の一つとして挙げた。
その上で「印パを非難するだけでなく、米国をはじめ五大保有国に対し、核軍縮の努力を強く迫っていくべきだ」と強調した。これに対し、阿部審議官は、すべての核保有国に対する核軍縮の働きかけなど、被爆国としての一層のリーダシップ発揮に努力する考えを示した。
要請を終えた平岡市長は、国際フォーラムに関する記者団の質問に「かねてから広島は核軍縮を論ずるにふさわしい都市だと思っている」と述べ、誘致に積極的な姿勢を示した。
![]()