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ドームのある風景 (2006.7.24〜7.29)

 1:あの日 | 2:復興とともに | 3:ラジオ体操 | 4:河岸ステージ | 5:被爆電車  | 6:都心の森

原爆ドームに見守られ、相生橋を渡る被爆電車651号(撮影・高橋洋史)

走り続け地球65周分

 広島電鉄の被爆電車「651号」がモーター音も高らかに相生橋の坂を上る。原爆投下の目標になったT字の橋だ。

 一九四四年秋から原爆の日まで女学生運転士だった藤井照子さん(78)=福山市=は、この橋を通るのが楽しみだった。見つめる先は円屋根の広島県産業奨励館(原爆ドーム)。「食糧難で娯楽のない時代。モダンな建物が心の安らぎだった」。自身は広島駅で被爆し一命を取り留めたが、変わり果てた奨励館を見るのは今でもつらい。

 今年六月、被爆電車650形四両のうち二両が引退。残る二両が、朝夕だけ活躍する。ともに、走った距離は地球約六十五周分に上る。

 「一緒に頑張った仲。走り続けてほしい」。そう願いつつ、藤井さんは最近、老いた電車が病気と闘う自らと重なる。「もう休んでもらっていい」とも思う。

 原爆ドームも満身創痍(そうい)。「おーい、元気か」。通りがかるたび、ドームと電車は言葉を交わしているかのようだ。(馬場洋太)

ドームのある風景

2006ヒロシマ


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