旅先のタイの雑踏で、トレイシー・ランバーさん(33)=広島市東区=は目を疑った。歩く若者のTシャツに、思いもしない絵柄が刷ってある。母国・米国を襲った中枢同時テロ事件で首謀者とされていた、ひげ面の男の似顔絵…。 無神経さに一瞬、あきれた。「でも、気を取り直したんです。平和を祈る気持ちは誰だって、きっと持っているはずですものね」 そんな寛容をはぐくんだのは、「千日修業」のおかげかもしれない。 ランバーさんは三年前、英語指導助手として広島市内の中学校で働きだした。初めての夏、市平和記念公園でカラフルな千羽鶴にひかれ、折り鶴に人々が託す心根に感動した。「任期は三年。毎日一羽ずつ折れば、私にもできる」
この夏、帰国する。「反戦や非暴力の意思こそ、私は静かに示したい。千羽鶴で教わったこと」。母国の教壇で、自分の役割を探す。
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