中国新聞
第5回 国連軍縮京都会議
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核時代と同時テロ
(同 英文)

核時代 負の遺産

アフガン攻撃 米中枢同時テロ

2002/08/14
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タリク・ラウフ氏(IAEAの検証安全保障政策部長)
テロと大量破壊兵器
 施設の安全性に疑問 IAEAの役割は補完的

 オサマ・ビン・ラディン氏率いる国際テロ組織アルカイダによる犯行とされる世界貿易センターや米国防総省などへの旅客機による攻撃は、あらためて原子力発電所など核施設の治安・安全性などに疑問を投げかけた。攻撃対象になったときの放射能被害などがあまりにも甚大だからである。

 会議では、核物質管理センター(日本)の栗原弘善専務理事がテロリストによる危険行為として(1)核兵器そのものの入手(2)プルトニウムやウランなど兵器用核物質の取得(3)核施設への攻撃(4)核物質を通常火薬で爆発させる放射能兵器の使用―の四点を挙げた。

 栗原氏はとりわけ、核物質がテロリストの手にわたり、いわゆる「汚い爆弾」として使われることへの強い懸念を表明。各国が核物質の厳しい取り扱いや、核施設の防護対策を強める必要があると強調した。

 核拡散防止条約(NPT)加盟国の原発から出る使用済み核燃料などの査察を実施している国際原子力機関(IAEA)のタリク・ラウフ検証安全保障政策部長は、「一九九三年からこれまでに違法な核物質移転が二百八十四回報告されている。うち十八回は実際に高レベルのプルトニウムやウランの売買に関係していた」と指摘。テロリストによる核弾頭の入手や製造の可能性はなお低いとしながらも「放射能兵器として使用される可能性は高い」と警告した。

 その上で、9・11テロ事件以後、IAEAが核物質を保有する国々との連携を強め、情報交換や査察などを密接にしているとした。  が、一方でラウフ氏は「核物質管理に果たすIAEAの役割は補完的なものにすぎず、医療・工業分野を含め世界中にあふれる膨大な核物質の安全管理は、それぞれの当事国が当たらなければならない」と、各国の厳しい管理と取り締まりに依拠している点を力説した。

 他の参加者からは、テロリストではなく米国など国家が放射能兵器である「劣化ウラン弾」を通常兵器として一九九一年の湾岸戦争などで使用し、すでに多くの被害者が出ている実態を報告。劣化ウラン弾の製造・使用禁止の必要性を訴えた。

 大量破壊兵器として、テロリストによる化学兵器や生物兵器の製造・使用の危険性についても討議された。参加者のほぼ一致した見方は、化学・生物兵器が無差別に使用される可能性が高いとして、化学兵器禁止条約(CWC)や生物兵器禁止条約(BWC)の強化が要請された。  

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