廃虚からの再生映す
「こんなところに命の息吹があるなんて」「見守って、長生きさ
せたいね」。灰色にくすんだ茶に、小さな緑が光る。朽ちたサルス
ベリの幹。市民たちは五センチほどの新芽に驚いた。
緑の再生を願い、植樹が本格化して四十七年。イチョウやクスノ
キなど三メートル以上の高木だけで約五十種類九百本余りに及ぶ。
その木々は慰霊のゾーンを、そして憩いの場をつくってきた。
ただ、このサルスベリのように幹を枯らすケースもある。一九九
六、九七年度の広島市の調査で、枝枯れがあった木は約八割。市は
九九年度から五年かけ、木片チップを敷き詰めるなど、樹勢回復に
取り組んできた。
枯死したサルスベリの幹に生まれた小さな緑。何の木かは分から
ないが、平和を願う市民には希望のメッセージに映る。
|