広島はあす六日、二十一世紀になって初めての「原爆の日」を迎
える。人類史上初めて使用された核兵器の犠牲となった被爆者。胸
中に、語っても語り尽くせない体験、忘れようとして忘れられない
記憶を刻む。その訴えは、核戦争の抑止力ともなってきた。老いる
被爆者の体験をしっかりと継承していくことが、求められる。(〓
井和夫)
広島市教委が六月にまとめた「子どもの平和意識調査」。原爆投
下の年を正確に答えられない小学生が、被爆地でありながら五割を
超え、中学生でも三割近くだったことは、被爆者や教育関係者に衝
撃を与えた。被爆体験が「歴史」になろうとしている今、体験継承
が急務であることをあらためて浮き彫りにした。
市は七月、若い世代に向けた体験継承推進プラグラムとして、被
爆資料の調査収集や平和学習の強化など十九項目をまとめた。被爆
者、市民と協力して着実に実らせることが求められている。
広島市の被爆者(三月末現在)は九万人台を割って八万八千五百
九十二人に。平均年齢は〇・七歳上がり七〇・一歳と、初めて七十
歳台に乗った。
約五千人とされる海外に暮らす被爆者の存在も忘れてはならな
い。大阪地裁は六月、在外被爆者にも被爆者援護法の適用を認め
た。政府は控訴したが、一方で厚生労働省は援護法見直しに着手し
た。現状を「違憲の疑いがある」とした大阪地裁の指摘を、政府は
重く受け止めなければならない。
今なお、地球上に二万発以上の核兵器が存在する中、昨年五月の
核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、核保有国は核兵器廃絶の
「明確な約束」をした。
それから一年余り。ブッシュ米政権はミサイル防衛の早期配備を
打ち出すなど、核軍拡競争につながるとの懸念も生まれている。
「明確な約束」の実行を迫るよう、国際世論を高めるのは、広島の
大きな役割である。
秋葉忠利広島市長は平和宣言で、今世紀を「人道と平和の世紀
に」と提唱。「広島は人道都市として羽ばたきたい」と訴える。そ
の精神が根付くかどうか、これからの取り組みにかかっている。
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【写真説明】21世紀最初の平和記念式典が開かれる平和記念公園。原爆ドームや原爆資料館が「ノーモアヒロシマ」を世界に発信し続ける
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