日系米国人四世の作家ラーナ・レイコ・リズトさん(37)=ニュー
ヨーク市在住=が、広島で被爆した日系二世の女性をモデルにした
小説を執筆するため、六月末から広島市で取材を進めている。「大
国のはざまで揺れた人の軌跡から、失われつつある日系人の歴史と
記憶を取り戻したい」と手掛かりを探している。
小説では、日本で教育を受けて帰国した日系二世の夫に連れられ
て、第二次世界大戦中に広島に来た女性の人生を描く。主人公は言
葉が分からず、生活になじめないまま離婚。そして被爆、終戦…。
「家族にも国にも裏切られた特異な経験は、普通の人とは異なる
戦争観を生んだはず」とリズトさん。原爆投下前後を知る日系人
や、通信傍受などで軍に従事した人にも会いたい、と言う。
リズトさんの祖父は広島県、祖母は福岡県出身の日系二世。一家
はコロラド州アマチの強制収容所に送られたが、家族が収容所につ
いて話すことはなかった、という。
初めて収容所の歴史と向き合ったのは、開設五十周年記念に各地
の日系人が収容所に集まった一九九二年。「説明板もセレモニーも
なく、目の前に小さな十字架と無数の墓だけ。ここで大変なことが
起きたのだと衝撃を受けた」と振り返る。
リズトさんは、日系人家族を描いた小説「WHY SHE LE
FT US」を九九年に出版。多民族文化の理解につながる文学作
品に与えられる「全米書籍賞」を受賞した。連絡先は、電話082
(222)6103、ファックス082(222)6122。
【写真説明】「小説を書くことで、日系人の歴史を鮮明にしたい」と話すリズトさん
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