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米国ピースアクション教育基金 政策ディレクター
トレーシー・モベロさん(33) |
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■米に反核の兆し再び |
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MD構想阻止へ力結集 |
<プロフィル> オハイオ州クリーブランド市生まれ。1993年 から96年までスイス・ジュネーブにある反核NGO「国際平和ビ ューロー」で活動。帰国後、ピースアクション教育基金の国連コー ディネーターを務め、今年1月から現職。 |
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―国際平和ビューローの代表として平和記念式典に参列した五年 前に比べ、今回はいかがでしたか。
前回と同じように深い感動を覚えた。でも原爆投下で多くの犠牲 者を生み出しながら、その同じ国が今なお「使用可能」な新型核爆 弾を開発している。アメリカ人として謝罪の気持ちを抱くと同時 に、これまで以上に反核平和のために行動しなければとの思いを強 くした。
▼開発資金600億ドル
―ピースアクション教育基金(PAEF)は全米最大の平和団体 と聞いています。
そう。全米に百以上の支部があり、約八万五千人のメンバーを抱 えている。一九五七年に「SANE(まっとうな)核政策委員会」
として誕生し、さらに八七年に「核兵器凍結キャンペーン」という 草の根グループと統合、九三年からPAEFの名前を使っている。
―今、一番力を入れている活動は?
ブッシュ政権が大規模に進めようとするミサイル防衛(MD)構 想を阻止することだ。MDは弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条
約など、国際社会が築いてきた核軍縮の枠組みを根底から崩してし まう。それだけでなく、全体で六百億ドル(約七兆五千億円)という
膨大な開発資金は教育など民生に使うべき税金の浪費であり、大多 数のアメリカ人にとって何の益にもならない。
―具体的にはどのような活動に取り組んでいますか。
MD構想の誤りを分かりやすく説明したパンフレットやはがきを 作って各地で市民に配布したり、反核スローガンを大書した実物大 のミサイル模型をトラックに乗せて主要都市を回ってアピールして いる。各支部の地元紙に意見広告も出している。六月には国内のい くつかの平和団体が協力して首都のワシントンに七百人が結集し て、上下両院議員に対しロビー活動を展開した。
―MD構想などに反対するアメリカ市民の関心は高まっています か。
米ソ冷戦時代の八〇年代初期、私がまだ高校生だったころの反核 運動の高まりは残念ながら見られない。でも、ブッシュ政権が誕生
した年頭に比べれば、MD問題を契機に随分と関心が高まってきて いる。特に平和運動にかつて参加していた人たちの姿が目立つ。
▼若者へ被爆証言
―しかしブッシュ政権の核政策を変えさせるのは容易ではないで すね。
その通り。ラムズウェル国防長官をはじめ、大統領側近の政策決 定者たちは世界最大の兵器メーカーであるロッキード・マーティン
など軍需産業との結びつきが深い。彼らは米国が「ならずもの国 家」からあたかも攻撃されるようなイメージをつくり出し、スター
ウォーズ構想を進めようとしている。
大切なのは米国の同盟国であるドイツなど欧州各国や日本政府、 そして市民が米政府に圧力をかけることだ。日本政府のようにMD 構想に理解を示したのでは、私たちの運動にとって最大のマイナ ス。議員らは「同盟国も賛成している。あなたたちが心配するよう なことは何もない」と、私たちの要求に耳を傾けなくなる。
―MDはアメリカ人だけの問題ではないと…。 世界中の人々にかかわる問題だ。今、こうした配備を許したら軍
拡競争の再燃や核拡散につながり、人類全体が一層危険な世界に引 き込まれる。その道を許さないためには、アメリカ人の力だけでは
足りない。PAEFは二年前に広島から被爆者を迎えて証言活動を した。被爆者の体験談は、アメリカの若者らに一番説得力を持つ。
こうした機会をもっとつくっていきたい。
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