2001/7/29

アイルランド外務省軍縮・不拡散局長
ダラ・マッキンバーさん(53)
■核保有国へ監視強化を
国連総会でNMD議論へ■
〈プロフィル〉ダブリン大で政治学博士号取得。外交官として安 全保障・軍縮問題に取り組み、2000年のNPT再検討会議では 新アジェンダ連合の一員として精力的に交渉に当たった。
 

  ―今月二十一日まで続いたニューヨークの国連本部での国連小型 武器会議にも出席していたと聞いています。

 その通りだ。核兵器から小型武器まであらゆるレベルの軍縮会議 に、アイルランド政府を代表して参加している。

 昨年のNPT再検討会議では、メキシコやブラジル、スウェーデ ンなど中堅国家七カ国で構成する新アジェンダ連合(NAC)のイ ニシアチブで、核保有五カ国から核廃絶への「明確な約束」を取り 付けることができたと思っている。むろん、それを可能にしたの も、核削減に真剣に取り組もうとしない核保有国に対する数多くの 非核保有国の強いフラストレーションがあったからだ。

 ▼重大な背反懸念

 ―その明確な約束が、今年一月に誕生したブッシュ政権の安全保 障政策によって揺らいでいます。

 確かに核兵器廃絶に向け、これまで国際社会が積み上げてきた枠 組みが根底から崩れる可能性をはらんでいる。でも、まだそうなる と決め付けるのは、時期尚早だ。

 弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の維持、CTBT早期発 効への取り組み、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約に 向けての交渉開始…。再検討会議最終文書に盛り込まれたこうした 主要な要素が一つでも崩されることがあれば、核廃絶に向けた取り 組みへの重大な背反である。そうなれば、核拡散防止と核兵器廃絶 を目的としたNPT条約そのものが機能しなくなる。

 ▼米の動きを注視

 ―それを食い止めるためには何が必要ですか。

 非核兵器国政府や市民社会が、米政府をはじめ核保有国に対し て、再検討会議での約束を守り、行動に移していくよう圧力を強め る必要がある。

 ―今年十月に始まる国連総会で、NACはどのような核軍縮提案 を考えていますか。

 二、三週間のうちにメンバー国の間で話し合いが始まる。が、米 政府のNMDやCTBTをめぐる動きによって今後二カ月間で状況 がどう変わるか、それを見極める必要がある。いずれにしても今秋 の国連総会では、NMDの問題が大きな議題になるだろう。

 ―ヒロシマ・ナガサキの役割についてどう思いますか。

 六月に長崎から被爆者らのグループがダブリンを訪れた際、初め て被爆体験を聞く機会を得た。とても心を動かされた。広島、長崎 で何が起きたかをわれわれは忘れがちであり、常に思い起こす必要 がある。原爆被害の実態を含め、被爆地からのメッセージがさまざ まな形でもっと世界中に届けば核廃絶の必要性をみんなが理解する ようになるだろう。そのための努力を続けてほしい。
21世紀 岐路に立つ軍縮