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| その5 木のうた |   |     むらの、くすのきが、きられることになりました。
  まちへつづく、あたらしいみちが、できることになって、おおきなくすのきが、じゃまになったからです。
  おやくにんが、きをきるひとといっしょにやってきて、さあ、きるぞという、そのとき。
  「まってくだされ」
  ひとりのおばあさんがあらわれて、おおきなきのみきに、りょうてをまわして、「このきのために、うたをいっきょく、うたわせてくだされ。このきには、恩がありますけえ」といいました。
  おやくにんのゆるしがでて、おばあさんが、うーうーと、うなるようなこえで、たかくひくく、うたいだすと、どこからか、たくさんの、とりがとんできて、くすのきの、えだいっぱいにとまって、ぴちぴちうたいだしました。
  どのとりも、どのとりも、このくすのきであそんだり、やすんだりした、おんがあって、おわかれがしたいのでした。
  ちいさいとり、おおきいとり、さまざまないろの、とりたちがそれぞれのうたを、うたいだすと、どこからか、やまにすむけものたちが、ぞろぞろやってきました。
  きつねもたぬきも、うさぎものねずみも、やっぱりおおきなくすのきに、おもいでがあって、おわかれのうたを、うたいにきたのでした。
  うーうーという、おばあさんのうたと、ぴちくち、とりたちのうたにあわせて、けものたちが、うおんうおんと、うたいます。
   ♪うーうー ありがとう
   ♪ぴちくち やさしいき
   ♪うおんうおん さようなら
  おおきなくすのきは、だまって、きいていました。
  そらも、だまってきいていました。きをきるひとも、だまってきいています。
   ♪うーうー たのしかったよ
   ♪ぴいちく きのえだで
   ♪うおんうおん わすれない
   ♪いくつもの、いくつもの
   ♪はるとなつとあきとふゆ。
  うたは、いつまでも、いつまでも、つづくのでした。
 おわり
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