| 風よおいで
 
   1 あらしの夜 
 
 
  寒い夜のことでした。
  リサのおかあさんが、きゅうにぐあいがわるくなって、おとうさんと、病院へでかけることになりました。
   「リサ、ひとりで、るすばんできるかな」
  おとうさんがききました。
 「リサひとりおいて行くのは、しんぱいよ」
  おかあさんが、おなかをおさえながらいいました。
  リサは、おかあさんをあんしんさせようとおもいました。
 「だいじょうぶ。だって、らいねんは小学生だもん」
 「真夜中だから、マサトシくんちにもたのめないし。リサ、るすばんたのんだよ」
  おとうさんがリサのかたをたたきました。
 「だれがきても、カギをあけたらだめだよ」
  おとうさんは念をおすと、おかあさんを車にのせてでかけて行きました。
  リサは、ほんとうは、いっしょについて行きたかったけど、おかあさんのくるしそうなようすをみていると、いいだせませんでした。
  風がでてきたのか、窓に木の葉があたりました。しばらくすると、電気が消えました。まっ暗ななかで、リサはひとりでいることが、きゅうに、こころぼそくなってきました。ベッドにもぐりこむと、頭からふとんをかぶって、いつのまにかねむってしまいました。
 「オーイ、あけてくれ。あけてくれよ」
  だれかのさけび声で、リサは目をさましました。
  外は、風がふきあれていました。窓ガラスが、ガタガタとなっています。声は窓のむこうからきこえました。
 「だれ? だれなの」
  リサは、とびおきました。
 「おれさまはこがらし一号だ」
  いままで消えていた、へやの電気が、ぱっとつきました。
  目玉をぎょろつかせたものが、リサのへやをのぞいています。
 |