| おばあさんの古い家
 
   5 おばけのかあちゃん 
 
 
  一瞬、おばあさんはぞくっとしましたが
 「『うらめしや〜』なんて、ずいぶん古いタイプのおばけね」
  と笑いました。
  「なにが古いものですか。わたしは、都会のマンションでくらしていたんですからね」
  白いおばけは、正体をあらわすとそういいました。
 「あ、かあちゃんだ」
  オーちゃんは、そのおばけにだきつきました。
 「その子を売って、お金もうけをするつもりなんでしょう」
  おばけのかあちゃんは、おばあさんを、にらみながら
  オーちゃんをだきしめました。
 「おばあさんはそんなことしないよ。この家、おばあさんの家なんだ。ぼくといっしょにすもうって、ふたりでおそうじしたんだよ」
  オーちゃんがいうと
 「ごめんなさい、つい人間をみるとうたがってしまって」
  かあちゃんが、あやまると
 「いいんだよ。都会からにげてきたものどうし、あんたもいっしょにくらすかい」
  そこで、おばけのおやこは、おばあさんの家にすむことになりました。
 「さて、きれいになったいえにお花をかざろうね」
  おばあさんは、オーちゃんをつれて、野原にお花をつみにでかけてゆきました。
 「じゃあ、わたしもなにかおてつだいしなくちゃあね」
  かあちゃんは、家のなかを、ぐるりとみまわしました。
 「すこしかざりをつけて、あじのあるいえにしましょう」
  かあちゃんはそれから、あちこちにくものすをはったり、とかげのしっぽやへびのぬけがらをかざったり、かびをはやしたり、ゆかに枯れ葉をまきちらしたりと、おおいそがしです。
  おばあさんの家は、あっというまに、またもとのきたないおばけやしきになってしまいました。
  おばあさんとオーちゃんが帰ってきます。花たばをかかえて歌をうたいながら。
 (おわり)
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