| 第5話 願いごと 
 
 
  ピパって、子どものころのパパのことだよ。
  流れ星に願いごとをするとかなうって、ほんとうだ。
  
  だけどとってもむずかしい。願いごとは三回くりかえさなくちゃ
いけない。なのに流れ星は、あっというまに消えてしまうから、考えてるひまなんてない。
  そこでピパは考えた。流れ星を見たら、こういえばいい。
  「もいっかい、もいっかい、もいっかい」
  そうしたら、また流れ星に会える。そのときまでに、願いごとを
考えておけばいい。だからピパは、何度も流れ星に会っている。
  だけど、それでもうまくいかない。「おもちゃおもちゃおもち
ゃ」って、いってやろうと思っていても、流れ星を見たとたん、す
ぐに思い出せない。何度やっても失敗。
  でも、失敗をくりかえしているうちに、ピパはわかってきた。願
いって、きっとこんなものなんだって。
  ほんとうの願いって、いつもいつも、心のなかで大切にしている
もの。流れ星を見たときに、すぐに言葉になるくらい、いつも大切
にしているもの。
  それくらいの思いがあったら、願いはかなう。願いをかなえてく
れるのは、そんな思いなんだよ、きっと。
 
 
 いくつかの願いをかなえながら、ピパは大人になった。
  パパとママが結婚したばかりのある夜。二人は公園のベンチにす
わって、夜空を見上げていた。すると、流れ星が流れた。
  パパは「何をお願いした?」って、ママにきいた。ママはこうい
った。
  「赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん」
  パパの願いごとといっしょだった。そしたらほんとに赤ちゃんが
やってきた。
  きみのことだよ。
 (おわり)
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