中国新聞社

(38)部屋探し交渉実り患者会の足場

2002/1/27

 ガラスの器に入った水栽培のヒヤシンスの芽が、やんわり盛り上がっている。外はまだ寒いが、「春遠からじ」で、なんとなくうれしい。少しずつ暖かくなってくるのを、みんな待っている。

 この時期、風邪もはやっているので、体調を崩してしまうと大変だ。今のうちに、みんなが気軽に立ち寄ったり、集まったりできるような、いい場所を探しておこうと考えていた。

 患者会で使うことに十分な理解があって、あわよくば無料か格安、階段なし、採光良、駐車場もある交通至便な場所。そんな条件にぴったり合った、女性のための公共施設に目を付けた。趣意書を持って訪ね、必要性を訴えてみた。

 「このビルのどこかに空いた部屋ないですか」

 「うーん」

 「女性の健康を守るためにも必要なんです。ここはたくさんの女性が出入りされますよね。社会・心理的なサポートばかりではなく、身体的な面からサポートしていくことも、とっても大切ではないでしょうか」

 「なるほど。相談して、返事しましょう」

 あきらめないで、説得と交渉を重ねたのが功を奏した。一週間後、部屋を使えることになった。窓がある一階の奥まったところで、プライバシーを守れる。ドアは厚く、話し声が外に漏れることもない。小さいけれど、静かで落ち着ける場所なのだ。おまけに、スーパーがすぐ近くだから、買い物もできる。

 部屋で使うものは、とある公的機関で廃棄処分になった中から見つけてきたホワイトボード、いす、本棚などなど。きれいにふけば、見違えるようになって、十分これからも使えるものばかり。なんで捨てるんだろう。ただでもらって言うのもおかしいけど、やはり税金の無駄遣いだ。

 婦人科のがんに関する資料や本などを、少しずつ運び入れた。電話も付いた。あと、ほしいのはパソコン。

 「焦らず、ゆっくりやれば」。がんを体験した人へのインタビュー、文章書き、講演などで走り回っているのを見て、友人が気遣ってくれる。

 「軍資金をつくらなきゃ」

 「そのうち、天から落ちてくるわよ」

 「まさか、この不況に?」

 現実的なのは、私の性分かもしれない。

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