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寄せる期待 

国際団体・活動家 手紙に返信

平和への関心高めるには?

僕は昨夏、国連事務総長の潘基文さんに取材しました。世界の平和度が何%か聞くと「懸命に努力すれば100%は実現できる」と言われました。今、国連では100%にするためにどんな活動をしていますか。また、子どもには何ができますか。

世界では戦争や紛争で子どもが犠牲になっています。子ども兵士がいる地域もあります。しかし、身の回りでは、平和に対する意識が高い同級生は少ないように感じます。中高生が平和への関心を高めるために何が必要でしょうか。(中3・大林将也)



(国連広報センター提供)
「権利」学び話し合おう

国連広報担当事務次長 赤阪 清隆さん
        

国連は平和のためにさまざまな活動をしています。当事者間の紛争発生や悪化を防ぐ「予防外交」、敵対する当事者間を平和的方法で合意させる「平和創造」、国連が現地に介在する「平和維持活動」などです。

        

まずは皆さん、子どもの権利について学びましょう。周囲や他国の子どもが自分たちの権利について理解できるよう、手助けしてください。子どもの権利には、教育を受けることや虐待から解放されることに加え、意見を聞き入れてもらうことなども含まれます。

        

皆さんができることはたくさんあります。模擬国連に参加して他の国や人々について知り、どのような共通点があるか学んでみてください。国連広報センター(東京)のサイトで日本での活動を知ることから始めてもよいでしょう。そして、友達や先生とより良い世界の実現のための策を話し合ってください。

        

国連はインターネットを通じ、平和への取り組みを紹介し、皆さんと気軽に交流できるようにしています。サイトや、フェイスブックを見てみてください。難民の生活、自然災害の対策を考えることができるゲームもあります。一番大切なのは、平和の種をまく活動を続けることです!

国連 世界の平和と経済、社会の発展に協力するため1945年10月に発足。現在の加盟国は193カ国。ひろしま国では、62号「国連で働く」、75号「8・6訪問 潘国連事務総長インタビュー」で紹介した。

あかさか・きよたか 1948年大阪府生まれ。京都大卒業後、71年外務省に入省。国連日本政府代表部大使、経済協力開発機構事務次長などを経て2007年4月から現職。63歳。
日本に求められているものは?

18号「平和をつくる」で、瀬谷さんのワークショップを受けました。武装解除について初めて知りました。

紛争地で起こっている問題は、けんかなどの身近な問題と似ているのではないでしょうか。解決には話し合いが一番ですが、難しいのが現実です。

その後、子ども兵の現状はどうですか。また、東日本大震災で日本紛争予防センターの今までの活動が生かされる機会がありますか。日本に求められているものは何でしょうか。(高3・高田翔太郎)



(日本紛争予防センター提供)
復興経験 世界と共有を

日本紛争予防センター(JCCP)事務局長 瀬谷 ルミ子さん
        

紛争など世界の問題も、自分の身の回りの人間関係も、後で振り返ると「あの時こうすれば良かった」と分かるのに、自分が問題のさなかにいると気付くのが難しいところが似ていますね。どちらも、ダメージが浅いと修復できますが、大きな亀裂や被害が出てしまうと、後悔しても取り返しがつかないものです。だから、問題が大きくなる前に解決する方法が大切です。

        

子ども兵は、残念ながら今でもソマリアやコンゴ民主共和国、南米のコロンビア、中東の一部の国などに存在します。一方、子どもの徴兵を禁止する法律に署名する国が増え、ダルフールでは武装勢力が子ども兵の引き渡しに応じるなど、進展もあります。

        

東日本大震災と紛争地の復興を見て共通して感じるのは、住民ができること、政府しかできないこと・すべきことをまず明らかにし、埋められないギャップを民間などが支援する役割分担の大切さです。支援する側の思いが強すぎて、住民が自分たちでできることまで支援しても自立の芽を摘んでしまうこともあります。逆に民間ができることを政府がしても復興は進みません。

        

復興には長い時間がかかります。一方、日本の災害の復興支援を見たアフリカなどの国から、ノウハウを教えてほしいと要請を受けています。

        

紛争や貧困から立ち直り、成長していく国がアフリカなどでも増える中、戦争や震災の復興を経験した日本が、対等なパートナーとして復興を果たす世界の国々と関わっていくことを始めるチャンスが今だと私は考えています。

せや・るみこ 1977年群馬県生まれ。英ブラッドフォード大大学院修了(紛争解決学)。非政府組織(NGO)職員(ルワンダ)、国連ボランティア(シエラレオネ)、日本大使館書記官(アフガニスタン)、国連職員(コートジボワール)などで兵士の社会復帰支援や平和構築活動をし、2007年4月から現職。11年9月「職業は武装解除」出版。ひろしま国では18号「平和をつくる」の、28〜54号で「みんなの平和教室」を連載。34歳。
私たちにできることは?

83号「平和かるた」で取材しました。平和について深く広く考えておられてすごいと思いました。それ以来、私もいろんな確度から物事を考え、結びつけるよう努力しています。

シボさんは、平和な社会になるために子どもができることはなんだと思いますか。また平和とは何だ、と子どもに伝えていくべきでしょうか(中3・吉本芽生)


平和への道 思い描いて

仏の平和活動家 美帆 シボさん

昔の戦争の話を聞いたり、今世界で起きていることに目を向けたりすると、自分ひとりの力で何ができるんだろう、と心細くなることがあります。大人の私でさえそうだから、子どもはなおさらかもしれません。でも、子どもの存在そのものが素晴らしい「力」なのです。ちょっと想像してみましょう。この地上から子どもが一人もいなくなった世界を。そしたら人類は滅亡を待つのみです。子どもがいるからこそ、私たちは未来に光を投じ、前進しようとするのです。

        

私が子どもたちにお願いしたいのは、平和な世界とはどういうものか思い描くこと。それは夢であっても、その夢に近づくためにどうしたらよいのか知恵をめぐらせば、今の問題解決に努力する人たちが必ず現れてきます。一人一人の力は小さくても、何人も集まって、しかも新しい世代に受け継がれてゆけば、どれほど大きな力になるか、「ひろしま国」のジュニア・ライターたちは体験したと思います。私は誕生して間もない「ひろしま国」を知っています。短期間の発行予定が1年になり、さらに100号に達成したのは、皆さんが苦労しながらも人の心にしみいるメッセージを発信してきたからでしょう。かつてジュニア・ライターだった子が立派に成長し、自分の力を発揮している姿を見たことがあります。そんな時、私ももうちょっと頑張ろうかな、と励まされるのです。

みほ・しぼ 1949年静岡県生まれ。75年に渡仏。82年に「フランス広島・長崎研究所」を設立した。現在、フランス平和市長会議顧問。歌人として2000年度朝日歌壇賞受賞。ひろしま国では、創刊号「世界の中のヒロシマ」、16号「アニメの平和力」、80号の「8・6を伝える」に登場。61歳。
人権サミット提案します

昨年11月に広島市内であったノーベル平和賞受賞者世界サミットで取材しました。シェティさんから、子どもへの死刑執行や児童労働など人権侵害について教わりました。解決策として、私たちは人権について意見交換するサミットの開催などをひろしま国の紙面で提案しました。それについてどう思いますか。平和の実現のために子どもたちができることは何ですか。(中3・寺西紗綾)


若者の力 変化もたらす

アムネスティ・インターナショナル事務総長 サリル・シェティさん
        

若者が変化をもたらす力を持っているのは真実です。人権について子どもサミットを開いたり、学校のカリキュラムで人権について考えたりする提案は、貴重です。実現に向けて行動してください。

        

平和とは何かというのは、多くの答えがある難しい質問です。アムネスティ・インターナショナルは、あらゆる人の尊厳が守られ恐れることなく暮らせるように、人権が尊重されることこそが平和だと考えます。

        

子どもたちは「未来」です。平和で尊厳が認められ、寛大な心が土台となる世界をつくるには、子どもたちが協力し合うことが不可欠です。アムネスティは、今後もこういった目標に向かう若者に協力していきます。平和と人権のためのあなたたちの活動を心から応援しています。

サリル・シェティ 1961年生まれ。インド出身。2010年7月から現職。アムネスティ・インターナショナルは人権侵害に関する調査や政策提言をしている国際人権団体。1961年設立。英ロンドンに国際事務局がある。77年にノーベル平和賞受賞。81号「子どもの人権を守る」に登場。50歳。