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![]() 危険知りつつ…兵士の防護策とらず
湾岸戦争に参加した米軍兵士六十九万六千人のうち、劣化ウラン 弾による汚染地帯に身を置いた兵士は、四十三万六千人とされてい る。
米国防総省は「人数に全く根拠がない」と、フェーヒーさんを厳 しく批判した。しかし、退役軍人やその家族らでつくる「全米湾岸戦争 リソース・センター(NGWRC)」(本部・ワシントンDC)な どの圧力により、八カ月後に劣化ウラン弾の使用地域の地図を公 表。四十三万六千人の地上軍兵士がクウェート、イラクの劣化ウラ ン弾使用地帯に入ったことを認めた。 劣化ウランの危険性については、湾岸戦争以前から指摘されてい た。 例えば、劣化ウランの医学、環境評価をした七四年の軍の報告 書。それには「戦闘状況下で劣化ウラン弾を広範に使用した場合、 その周辺では劣化ウラン混合物の体内への吸入、摂取、着床が著し い可能性がある」と記す。 軍と契約関係にある化学応用国際社が九〇年七月に出した報告書 にも、その危険性が明確に述べられている。劣化ウランを「低レベ ルのアルファ放射線放出物質」とした上で「体内被曝の時はがんと 関連し、化学的毒性は腎臓(じんぞう)損傷の原因となる」と記 述。「兵士が戦場で煙霧状の劣化ウランにさらされると、物質が持 つ放射線や化学的毒性の潜在的な影響を強く受ける恐れがある」と 警告する。 このように劣化ウランの危険性については事前に分かっていなが
ら、国防総省は兵士たちに予防教育もしなければ、防護措置も取ら
なかった。
九三年、会計検査院(GAO)がまとめた報告書では「陸軍は劣 化ウランによる適切な汚染対策を講じなかった」と指摘。その理由 として、健康を失った当事者には受け入れ難い軍の弁明を紹介して いる。「戦闘中やその他の生命を脅かされる状況下では、戦闘によ る危険の方が、劣化ウランによる健康へのリスクよりはるかに高 い。陸軍高官はこのため、防護対策は無視できると信じていた」 と。 この結果、二十、三十代の多くの若い兵士が戦争終結後に発症し、命を失った。 湾岸戦争では、劣化ウラン弾による健康障害だけでなく、米食品 医薬品局(FDA)で認可されていない薬の投与や、油田火災によ る煙害、停戦後にイラクの化学兵器貯蔵所を爆破、その際に放出さ れた毒性物質による影響など、さまざまな健康障害の要因が考えら れている。 兵士たちが軍の命令で強制的に服用しなければならなかった薬品 には、抗化学兵器剤の臭化ピリドスチグミン(PB)、生物兵器で あるボツリヌス菌に対するワクチン、炭疽(そ)病予防薬であるア ントラックスなどがある。NGWRCの調べでは、PBは二十五万 人、ボツリヌス・ワクチン八千人、アントラックスは十五万人がそ れぞれ服用したとされる。
連載第1部 超大国の陰 米国 ![]() ![]() |