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人体への影響は? 周辺住民に消えぬ不安 ネバダ州リノ市に拠点をおく非政府組織「軍の説明責任を求める田舎同盟」事務局長のグレイス・ポトーティさん(45)=写真=は、州住民や行政の意識の変化を次のように説明する。 「ネバダ州は五〇年代初めから、ネバダ核実験場での大気圏核実験に協力するなど、八〇年代半ばまでは常に軍の拡大を歓迎してきた。でも、それ以後は違ってきた。確かに軍の存在による経済的メリットは少なくない。が、それ以上に劣化ウラン弾などさまざまな砲弾使用による生態系や住民の健康へのデメリットの方が大きいことに、住民も州政府も気づき始めたからだ」 田舎同盟は、インターネットを通じて軍事基地などを抱える全米各地の市民グループと情報を交換している。ポトーティさんによれば、劣化ウラン弾の試射場は一、二カ所を除きいずれも人口密度の低い過疎地にあり、放射能汚染問題を抱えているという。 例えば、インディアナ州南東部にある陸軍のジェファーソン立証グラウンド(JPG)。約二万二千三百ヘクタールの基地の一部を使って、八〇年代半ばから九四年まで劣化ウラン弾の威力や正確性を「立証」するための試射が繰り返された。その結果、約七十トンの劣化ウランをはじめ、砲弾の破片、貯蔵用ビルなどが残された。 このほか四一年から各種砲弾の試射場として使われたことで、基地内には約百五十万個の不発弾が残っているとされる。 国防総省は、既にJPGの閉鎖を決めている。しかし閉鎖を完了し、州に土地を返還するには、基地内の除染をしなければならない。九六年にロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ州)の研究者がまとめたJPGに関する環境リポートによると、劣化ウランのクリーンアップ費用だけで、最終的には七十八億ドル(約八千三百四十六億円)かかると推計する。 膨大な費用を前に、まだ除染作業が進んでいないのが現実である。だが、その間にも野生のシカなどが基地内の放射能汚染地帯にすみ、大気やエサを通じて体内に劣化ウランを取り込む可能性が高い。 近くの住民にとってシカの狩猟は、食用目的やレジャーとして昔から定着している。捕獲したシカの肉を食べれば、食物連鎖によって人々の体内汚染につながる。別の地域から取水している飲料水は安全とされているが、汚染水による牛などの家畜、かんがいによる作物への影響も危ぐされている。 国防総省は「人々の健康に影響するような危険はない」と説明しているが、「付近住民の懸念は強い」とポトーティさんは言う。 このほか、ニューメキシコ州サッコロ市にあるニューメキシコ州立工科大学付属のエネルギー物質研究試験センターの試射場や、カリフォルニア州ハーロング町のシエラ陸軍武器貯蔵・廃棄所のように、かつての先住民の土地や、現在も先住民が居住する土地が汚染されたり、健康被害が出たりしているケースもある。 |