「非核の世紀」―NPT再検討会議 核廃絶への道筋を描け

'00/4/23
社説

 「非核の二十一世紀」へ踏み出す足掛かりがつくれるか―核拡散 防止条約(NPT)再検討会議が、二十四日からニューヨークの国 連本部で始まる。今世紀最後の核軍縮に関する国際会議で、使命は 重い。核軍縮がいっこうに進まず、NPTが崩壊の危機にあるから だ。核保有国の良識を呼び覚まし、核兵器廃絶への道筋を描く転機 の場となるよう期待したい。

 NPTは発効から五年ごとに再検討を重ねながら、三十年たっ た。加盟は核保有五カ国など百八十七カ国を数える。六回目になる 今回の会議は、前回に決めた「核不拡散と核軍縮のための原則と目 標」の達成度を評価し、次の目標を定めるのが目的だ。「原則と目 標」は@包括的核実験禁止条約(CTBT)の締結A兵器用核分裂 性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉開始B非核地帯の拡大な ど。第六条(誠実な核軍縮努力)を具体化した課題だがほとんど実 践されず、絵にかいたモチに等しい。

 それどころか、この五年間はインドとパキスタンが新たに核実験 国に加わるなど、核軍縮に逆行する現象ばかりだ。米国とロシアは 臨界前核実験を続行。CTBTは形がい化し、米上院の批准拒否が それに拍車をかけている。イラン、イラク、朝鮮民主主義人民共和 国(北朝鮮)などの核開発疑惑は絶えない。「核独占の不平等体制 は変わらない」と、印パ、イスラエルなどが加盟せず、脱退の動き さえある。五月十九日の最終日までに、核軍縮の文書(議長声明) をまとめられる見通しは厳しい。

 一方で、わずかな望みも出てきた。ロシアの上下院が第二次戦略 兵器削減条約(START2)の批准を承認し、CTBTにも下院 が承認したからだ。再検討会議を目前に軍縮姿勢を打ち出すと同時 に、米のミサイル防衛構想(NMD,TMD)を断念させるなどの 狙いがある。クリントン米大統領は交渉歓迎の意思を表明し、中国 もCTBT批准に同調の動きを見せ始めた。軍縮努力を怠ってきた 批判をかわしNPT体制を維持したい核保有国の思惑が絡むが、核 削減が進展すれば歓迎だ。非核国が誠実な姿勢と受け止めれば、合 意文書ができる展望も開けよう。

 問題は合意の中身だ。ブラジルなどの新アジェンダ連合諸国が昨 秋、国連に提案し採択された「早急な核兵器廃絶」の扱いが焦点に なる。日本政府は初日の演説で八項目の提案をするが、CTBTの 締結やカットオフ条約の早期交渉など「原則と目標」を補足する域 を出ない。新アジェンダ決議は非建設的で、核の傘に頼るわが国の 立場からは賛成できないと言う。河野洋平外相は国会質疑を優先 し、代理を派遣する。核の世紀に終止符を打つべき局面の認識、唯 一の被爆国の責務、熱意が感じられないのは残念だ。

 出席の場を与えられる非政府組織(NGO)は、新アジェンダ決 議を踏まえた核廃絶のプラン作りを求める。長崎市の伊藤一長市長 も被爆地を代表して訴える機会が与えられた。世界平和連帯都市市 長会議もロビー活動を展開。原水禁、被爆者団体などもNGOに合 流してデモ、集会、原爆展などを計画している。国際世論を盛り上 げ、国家エゴを乗り越えて核兵器をなくすプログラム作りへ各国を 動かしたい。


next | back | NPTインデックスページへ