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米、軍縮に消極姿勢 「臨界前」続け NMD推進 ■戦力的優位に固執 「歴史的な前進だ」。オルブライト米国務長官の声明は大げさにしても、二十四日から始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議の関係者は一様に胸をなで下ろしたに違いない。十四日、ロシア下院の第二次戦略兵器削減条約(START2)批准承認のニュースは、「核軍縮に進展がない。このままでは失敗する」との懸念ばかり広がっていた再検討会議の行方に、ほのかな灯をともした。 しかし、直後のプーチン次期大統領の言葉が、核軍縮の不透明さを暗示する。「ボールは米側に投げられた」。START2の発効には米ロ両国の批准書交換が不可欠。プーチン氏はその前提条件として、米本土ミサイル防衛(NMD)構想を断念するよう米国に求めたのである。 他国に核軍縮を迫りながら、自らは敵国のミサイルを撃ち落とすNMD開発を進め、核戦力で優位の立場を崩そうとしない。強硬推進派の共和党にクリントン政権が押し込められがち、という国内事情があるにしても、最近の米国の核軍縮への消極姿勢はしばしば他国の反発を買っている。 ■上院CTBT否決 とりわけ昨年十月の米上院による包括的核実験禁止条約(CTBT)批准否決は、国際社会の失望を加速させ、米国内でも「堕落した軍縮」と悪評を生んだ。 NPT再検討会議の行方も、そんな米国の姿勢と密接にかかわる。NPT六条が定めた核軍縮努力を核保有国はどれだけ果たしたか―。再検討会議の焦点は、この条文の達成度に集中する見通しだからだ。 三月九日、東京都内であった国際シンポジウム。米国務省軍備管理担当上級顧問のジョン・ホラム氏は、予防線を張るかのようなスピーチをした。「第六条だけで評価すれば、NPTの価値を低めてしまう。(核軍縮への)非現実的な期待は(拡散防止が主眼の)NPT体制を損なう」 前日、ホラム氏は外務省で、服部則夫軍備管理・科学審議官と向き合っていた。軍縮に関して日米が初めて設けた「軍備管理・軍縮・不拡散・検証委員会」の初会合。CTBTの発効に備え、核実験監視プロジェクト推進などで合意した。上院の批准否決直後に渡米し、この委員会設置を働きかけた服部審議官は、内外で軍縮への発言力を失ったクリントン政権への「助け舟だ」と打ち明ける。 ■大統領選もネック 三月下旬、そのクリントン大統領はインド、パキスタンを訪問し核開発放棄を呼びかけた。「核実験で安全になったのか」「戦争の危険性は軽減したのか」。だが、その合間の二十二日、米国は臨界前核実験を実施した。都内の米国大使館前で抗議した日本原水協の高草木博事務局長がハンドマイクを握る。「大統領、あなたの言葉をそっくりあなたにお返ししたい」 ロシアからのボールや被爆国からの問いかけに、確たる答えを出せない米国。大統領選の年、将来の軍縮の約束はしにくいとの見方も根強い。核軍縮の行方を自ら握る核大国がそんなジレンマを抱えたまま、NPT再検討会議は米ニューヨークの国連本部で幕を開ける。 |