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2000.7.15 |
年間160日 多忙な航海
■トルコ大地震では仮設住宅運ぶ
六月二十五日。「おおすみ」は、神戸市東灘区の海自隊阪神基地の 岸壁に停泊していた。側面の搭載口からは、陸上自衛隊第一三師団 (兵庫県伊丹市)の車両が、艦内に次々と積み込まれていく。北海 道に運び、陸自と共同で機動演習を展開するのだ。 潮位や岸壁の位置も計算し、車両の一つ一つがスムーズに入るか どうか、リハーサルも重ねている。四十トン近い戦車も、スロープを きしませながら艦内にすべり込んだ。「うまく積み込めるか心配だ ったが、大丈夫」。三月に就任した江崎一洋艦長は笑顔を見せた。 北海道での演習はこれで三年連続。戦車を乗せた航海は初めてだ。 「おおすみ」はまた一つ経験を積んだ。 空母にも似た広い甲板。自衛艦のイメージを変えた「おおすみ」 は他の艦船とは異なり、海自隊でただ一隻、自衛艦隊の司令官から 直接、指示を受ける特別な存在だ。米軍と同型の上陸用エアクッシ ョン艇(LCAC)を二機、搭載。三百三十人分の陸自隊員の居室 や医務室など多彩な機能が自衛隊の重要戦略を担う。 同時に、約七千人を乗せることができる災害派遣の能力も誇る。 昨年秋には、トルコ大地震の被災者に、仮設住宅を運んだ。各地の 自治体主催の防災訓練にもひっぱりだこで、艦内見学者は延べ二万 人を超す。
華やかな活躍の裏で地道な「実験」が続く。例えばヘリコプター による発着艦の訓練。「おおすみ」は空母ではないが、甲板はヘリ の運用を念頭に設計され、小型の哨戒ヘリなら、六機まで艦内に収 納できる。 このため航海の合い間をぬって実際の出動場面を想定し、海自・ 陸自を問わず、多機種のヘリを着艦させている。江崎艦長は「荒波 で揺れる甲板に降りるのはなかなか難しい。日本中の自衛隊ヘリに 一度は降りてもらわないと、いざという時に役に立たない」と言 う。艦にスタビライザー(揺れの防止装置)がなく、揺れが激しい のも悩みだ。 重要な装備のLCACにも、課題が見つかった。昨年七月、北海 道の機動演習で、一機が横波を受けて水をかぶり、故障のため動か なくなった。だが、米国製のため部品がすぐに手に入らない。修理 が終わったのは今年四月。一機体制が九カ月も続いた。 時速七十キロ出るLCACに人をそのまま乗せると、風圧で吹き飛 ばされることも就役後、初めて分かった。人員輸送用の付属装置が 新たに必要で、購入には億単位の費用がかかるという。 試行錯誤の一方で、新ガイドラインを意識した訓練も本格化して いる。昨年七月には四国沖で、同じくLCACを搭載する米海軍の 輸送艦と共同訓練を展開した。今年六月上旬、鹿児島・志布志湾 で、ヘリで運ばれた「邦人」を艦内に誘導する訓練もしたばかり だ。 江崎艦長は「艦の持つ力を一〇〇%発揮できるのは三年目のこれ から」と意気込む。「おおすみ」の年間の航海日数は約百六十日。 通常の護衛艦などに比べ、約三割多い。貴重な運用データは、玉 野市の三井造船玉野事業所で昨年十一月着工された同型艦の建造に も生かされる。 |