NPT体制の重要性確認 国連軍縮京都会議閉幕
'99/7/31
国連軍縮京都会議は三十日、京都市の国立京都国際会館で閉会式 があり、「今後十年間の安全保障上の懸念と軍縮戦略」をテーマと した四日間の討議を終えた。
閉会式では、会期中の五つの全体会議ごとに参加者が分担して討 議内容を報告。京都会議を主催し、議長を務めた国連アジア太平洋 平和軍縮センターの石栗勉所長が総括発言し、「核拡散防止条約 (NPT)体制が核の不拡散と核軍縮にとって極めて重要である、 と参加者の多くが了解した」と論議を振り返った。
今回の会議は、東西冷戦終結からほぼ十年経過したのを機に、今 後十年間の軍縮を展望するのが焦点だった。NPTの重要性が指摘 された半面、核実験を実施したインドを核兵器国として認めるかど うかが論議を呼ぶなど、核保有国を五大国に限定したNPT体制のジ レンマもあらためて浮き彫りになった。
会議ではその他の核軍縮の将来課題がひと通り指摘され、石栗氏 は総括発言で、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効、核 分裂性物質生産禁止条約の早期交渉開始など十項目を挙げた。その 実現方策や優先順位などの論議は深まらなかったものの、京都会議 直前に出された「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」の報 告書が強い関心を集めた。
国内での国連軍縮会議は今回で十一回目。今後も継続す る意向だが、来年の開催地は決まっていない。
▽今後10年の課題明確化
核兵器、ミサイル、通常兵器の軍縮から、北東アジアの安定と協 力、信頼醸成措置までを網羅した国連軍縮京都会議の議論は、その テーマ通り「今後十年間の安全保障上の懸念」をほとんど包含して いたと言える。
とりわけ、参加者に強く意識された核軍縮問題では、二〇〇〇年 四月に迫った核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、一番ホット な議題となった。「これまでの三回の準備会議では、何も決まって いない」「NPTが認める核保有五カ国が、現状のままではNPT 体制がもたない」…。日本の林暘軍縮大使らから、次々と懸念の声 が上がった。
解決への一歩は、包括的核実験禁止条約(CTBT)に調印しな がら、三年後の今も批准をためらっている米国、ロシア、中国が批 准する。ロシア議会が第二次戦略兵器削減条約(STARTU)に 批准し、さらに米国との間でSTARTVの交渉を進展させ、大幅 に核兵器を削減する―。
非核保有国の参加者のこうした声に、米ロ中の外交官や研究者は 寡黙だった。が、会場を離れ、個人的に話しかけると、率直に口を 開いてくれた。
「確かに米ロ関係はコソボ紛争で悪化した。しかし、ロシア議会 にはSTARTUの批准にそれほど強い抵抗はない。STARTV の交渉も始まるだろう」とロシアの外務省高官。米国の専門家も 「時間は少しかかるが、軍縮は進む」と見る。核大国である米ロが まず、核軍縮を進めなければNPT体制は維持できない。
会議では今後十年間の軍縮課題が、明確になったと言えるだろ う。だが、それを実現させるための方策となると議論が深まらな い。多くは核保有国への要望であり、核保有国にゲタを預けた形だ からだ。国連の問題解決機能が低下しているだけに、参加者の間に は戸惑いも見られた。(田城 明)
【写真説明】核軍縮の道筋を討議し、4日間の会期を終えた国連軍縮京都会議(国立京都国際会館)