国連京都会議開幕 今後10年の軍縮戦略討議

'99/7/28 開会

 国連軍縮京都会議(国連軍縮局、国連アジア太平洋平和軍縮セン ター主催)が二十七日、京都市の国立京都国際会館で始まった。ア ジア地域を中心に二十四カ国から政府高官や軍縮専門家ら六十人が 参加。三十日までの四日間、「今後十年間の安全保障上の懸念と軍 縮戦略」をメーンテーマに討議する。

 最初の全体会議「アジア・太平洋地域の平和と安全保障の促進」 では、海洋の核軍縮、軍縮に果たす市民の役割、人間の安全保障な ど幅広く取り上げた。

 フィリピンのフェリペ・マビランガン国連大使は、南沙諸島など 周辺国の領有権争いが続く南シナ海について「海洋での核兵器の影 響力の削減が地域安定につながる。核の先制不使用宣言だけでは不 十分」と、地域の核保有国である中国を暗に批判。九七年に発効し た東南アジア非核地帯条約の議定書に核保有国が署名していない現 状を憂慮した。

 これに対し、ロシアのプラト・アブダライエフ外務省参事官は 「(領海でない)大陸棚や経済水域も非核エリアに含め、経済活動 を拘束する。同意できない」と主張。中国のパン・セン外務省軍縮 軍備管理局次長も「中国の経済水域まで含めるのは問題。航海の自 由も侵してはならない」と述べながらも「中国政府は議定書受け入 れの用意はできている」と明かした。

 バングラデシュのアンワルル・チョードリー国連大使は、人間の 安全保障について「人々が病気や飢餓、抑圧や劣悪な環境から解放 されることである」と説明。人権侵害などを裁く国際刑事裁判所の 設立を支持した。インドのラマダス提督は「市民社会が国連の監視 役となり、諸決議の実行を働き掛けていくことが肝要だ」と訴えた。

 全体会議に先立つ開会式では、国連軍縮局のエフジェニー・ゴル コフスキー次長が「会議がアジア・太平洋地域の軍縮を促進する指 針となるよう希望する」と開会を宣言。秋葉忠利広島市長、伊藤一 長長崎市長がそれぞれ核廃絶を訴えた後、明石康・前広島平和研究 所長が基調講演した。

 国内での国連軍縮会議は今回で十一回目、京都では四回目。

 日本に軍縮副センターを/明石氏提案

 二十七日から京都市内で始まった国連軍縮京都会議で、明石康・ 前広島平和研究所長は基調講演し、「核不拡散・核軍縮に関する東 京フォーラム」の報告書を基に、国際社会への提言を実現するため の「国連の役割強化」など、今後の具体的な取り組みについて提案 した。

 明石氏は、来春、ニューヨークの国連本部で予定されている 核拡散防止条約(NPT)見直し会議について言及。「NPTが容 認する核保有国は、非核保有国に対して核兵器を使用しないという 法的拘束力のある条約づくりに取り組むべきである」と強調した。 こうした行為が「インドやパキスタンを包括的核実験禁止条約(C TBT)に加盟させることにつながる」と述べた。

 一部の国による国連無視の行為などで、その権威や有効性が揺ら いでいる国連の現状に対し、明石氏は核不拡散と核軍縮に果たす役 割の再強化を訴えた。とりわけ、アジア・太平洋地域などからの軍 縮への取り組みの重要性を指摘。その一つとして、現在ネパールの 首都カトマンズに置かれている国連アジア太平洋平和軍縮センター の「副センター」を日本に設置し、「日本人の軍縮への関心を高め よう」と提言した。

 さらに、核軍縮を進めることが「私たちの最大の課題である」と しながら、その一方で製造が容易になった他の大量破壊兵器である 化学・生物兵器や、地域紛争などで多くの人命を殺傷している小火 器、対人地雷などの問題解決にも積極的に取り組まなければならな い、と訴えた。

 明石氏は、「核不拡散と核軍縮にとって、ロシアへの技術的 ・財政的支援は国際社会の緊急課題である」と、東京フォーラム報 告書に盛り込また内容をあらためて参加者にアピールした。

【写真説明】21世紀に向けた核軍縮や安全保障をめぐる討議を始めた国連軍縮京都会議(国立京都国際会館)


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