'99.5.10 |
日本含め連携強化図る |
―中堅国家イニシアチブ(MPI)とはどういう組織ですか。 昨年三月、カナダの元軍縮大使で現上院議員のダグラス・ローチ氏の提唱で始まった国際的な非政府組織(NGO)だ。現在、国際平和ビューローや反核国際法律家協会など八つの国際NGOが加わっている。会の名称通り、非核の中堅国家や他の多くのNGOと協力しながら核軍縮に取り組んでいる。最終目標はむろん、核兵器の廃絶である。 ―具体的にはどういう活動をしてきたのですか。 各NGOのメンバーが専門性を生かしながら、自国政府の議員や政府、そして市民に対して核軍縮の必要性を説いてきた。中でも一番力を入れたのが、同じ時期に誕生したアイルランドなど八カ国(現七カ国)からなるニュー・アジェンダ連合(NAC)が昨秋の国連総会に提出した「核兵器のない世界へ―新しいアジェンダ(取り組み)の必要性」と題した決議案を支持することだった。 ―より多くの国が賛成するように働きかけたと・・・。 その通りだ。私の事務所から数ブロック内に国連ビルをはじめ、各国政府代表部の事務所があり、十一月半ばの決議まで毎日のように出かけては各国の代表らに意義を説いた。そこで得た情報をインターネットで流すことも重要だった。 印パ実験で危機感 ―中堅国家からなるNACとMPIが同時期に生まれた背景は何でしょうか。 米ソ冷戦が終わって十年。一九九〇年代初頭には大幅な核軍縮への期待があった。しかし、新しい世紀を迎えようとしながら、なかなか進展しない世界の核状況に、以前から核軍縮を強く唱えてきた非核の中堅諸国がいらだってきた。昨年五月のインド、パキスタンの核実験で、こうした国々は一層危機感を募らせた。 一方、MPIは今後、核軍縮のカギを握るのは中堅国家のイニシアチブによるところが大きいと判断。NGOの立場からこうした国々と連携を強めようと生まれた。 ―NACの決議内容の優れた点はどこですか。 特徴的なのは、核兵器が単に悪いと言うだけでなく、核保有国にこうすべきだと具体的に要求している点だ。例えば、核兵器を瞬時に発射できる状態にある警戒態勢を解くこと。米国では約三千発の核ミサイルが警戒態勢にあるとされている。それを解くことで、誤発射防止や相手に安心感を与えることができ、大幅なリスク軽減につながる。 米国は実質的敗北 ―米国は核の先制使用政策が危うくなると、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などに反対するように強く働きかけたと聞いています。 さまざまな圧力をかけた。しかし、非核のNATO加盟十三カ国(当時)のうち、トルコを除いてすべてが棄権に回った。カナダとドイツが大きな役割を果たした。米国にとってこの結果は、実質的な敗北だ。 ―でも、現実はコソボ紛争などで核軍縮への道が険しくなっています。 その懸念への答えは、核兵器の存在がコソボ紛争の解決や状況改善に何の役にも立たないことである。核兵器は状況を一層悪化させるだけだ。紛争を理由に核軍縮を遅らせたり、保有の正当化はできない。 ―今後の活動計画は? NACとの信頼関係を深めながら、他の中堅国家への働きかけを強めたい。キー国の日本を含めて。
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