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四方ににらみをきかせるような獅子の石像。
無縁墓石をうめこんだ台座の上に立つ |
門徒の無念忘れぬ
原爆投下の目標となった相生橋。うだるような暑さの中を本川に沿って北に歩くこと約十分。東西南北を向く赤茶色の四頭の獅子(しし)が目に入る。光福寺(堀義秀住職)境内に建つ「アショカピラー(アショカ王柱頭)」だ。
アショカピラーは、紀元前三世紀にインドを統一したアショカ王が「仏教が広まり、戦乱が絶えるように」という願いを込めてインド各地に建立した。堀住職が総代らと相談のうえ、インドから砂岩製のレプリカを輸入。境内の一角に設置したのは三年前だった。
光福寺では、原爆によって多くの門徒が命を失った。家が絶えたケースも少なくない。アショカ王が好きだという堀住職。戦後五十年を控えた五年前に「無縁となった犠牲者を供養する方法はないだろうか」と考え、アショカピラーの建立を思い付いた。
迫り来る悪を威嚇するかのような獅子の形相。堀住職は「原爆や戦争で亡くなった多くの人の気持ちを忘れないようにしたい」と話していた。
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