インド核実験に広島市民、怒りあらわ
'98/5/13
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二十四年ぶりに、十一日強行されたインドの地下核実験。「反 核」を訴え続ける被爆地・広島市内では、一夜明けた十二日、大き な波紋が広がった。「暴挙だ」「残念だ」―。事実上の「核保有国 宣言」に、市民の間には怒りと失望の声が相次いだ。
安佐南区内の家電量販店。買い物に訪れた被爆者の西区楠木町四 丁目、無職武広勉さん(57)は「核廃絶の流れに逆行する。言語道断 で許せない」と、怒りをあらわにした。
広島駅では、原爆で父親と姉妹を失った安芸区中野七丁目の主婦 山崎多美子さん(64)が「市民感情を逆なでにする実験は絶対に止め て」と懇願。安佐北区上深川町の無職平岩正見さん(76)は「被爆直 後の広島の惨状を思い出す。残念だ」と憤った。
「臨界前核実験でも許せないのにひどい。パキスタンとの関係が もっと悪くなる」。中区内の着物店で東区戸坂山根三丁目の内藤泰 枝さん(51)。百貨店前では、安佐南区八木三丁目の会社員大西一宏 さん(35)が「原爆展で、核の脅威が伝わらなかったのか」と戸惑い を隠さない。
宇品港でも、中区江波二本松二丁目の会社員有田明人さん(43)が 「原爆展で、広島の悲劇を受け止めてもらえたと思ったのに…」。 今治行きフェリーを待つ中区十日市町二丁目、会社員橋本岸子さん (30)は「ヒロシマの訴えが無視された。悲しい」。
安佐南区の大型書店では、同区東野三丁目の自営業河野和弘さん (42)が「日本は対インドの経済協力に何かの措置をとるべきだ」と 要望。東区牛田東二丁目の会社員宮沢英治さん(60)は「日本は、援 助金の一時凍結など、強硬な意思表示が必要だ。広島市は、ねばり 強い抗議行動を続けてほしい」と強調した。
西区内の百貨店で家族と買い物中の廿日市市佐方、会社員平野幸 政さん(28)は「蓄積される核汚染が心配。将来、子どもたちが安心 して暮らせるかどうか」と顔を曇らせた。
【写真説明】地下核実験の関連ニュースを伝える電光掲示板(12日午後6時、広島市中区の紙屋町交差点