インドの地下核実験で怒り渦巻く

'98/5/12

 インドが地下核実験を強行した十一日、被爆地広島では怒りと不 満が渦巻いた。広島市が首都ニューデリーで原爆展を開催したばか りの暴挙で、ヒロシマの願いが世界に受け入れられない現実に被爆 者らの失望感は深まった。

 広島県被団協の伊藤サカエ理事長は「いつまでも核抑止力にこだ わる核保有国の姿勢には怒りを覚える。非同盟諸国のリーダーであ るはずのインドまでもがヒロシマの願いを踏みにじり、無念でなら ない」と憤慨。もう一つの県被団協(金子一士理事長)の末宗明登 事務局長は「驚き、怒りを超えて、被爆者としてじっとしてはいら れない気持ち」と唇を震わせた。

 広島、長崎両市は首都ニューデリーで先月十日からアジア初の原 爆展を開催し、十日に閉幕したばかり。開会式に出席した平岡広島 敬市長は「核兵器はなくすべきだという信念を持った大勢の人に出 会えた」と手応えを強調していた。

 それだけに、ニューデリーに先立って原爆展が開かれたインドの ムンバイ(現ボンベイ)を一月に訪れた原爆資料館の畑口実館長は 「核兵器を二度と使ってはならないとの思いが伝わる一方、なぜ核 兵器を持ってはならないのかとの意見も根強かった。残念の一言」 と悔しがる。

 原水禁運動の先駆者、故森滝市郎さんの二女で、昨年十一月、イ ンドで平和行脚をした春子さん(59)は「新政権が核保有の可能性を 強調していたが、本当に核実験をするとは思わなかった。ヒロシマ の願いを受け止めてくれた市民が多かっただけに、二重のショッ ク」と話していた。


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