インドの核実験、印パの新聞報道ぶり紹介
'98/5/15
十一、十三日とたて続けに実施したインドの核実験をめぐり、イ ンドと隣国パキスタンの両国政府が政治的対立を深める中、両国の 新聞報道も核実験に対する支持と反発とに分かれ、論調は際立った 違いを見せている。インターネットで入手した印パの主要英字紙の 報道ぶりを紹介する。
【インド】
十一日の最初の核実験成功を伝える十二日付朝刊各紙は、「イン ドが核保有国の仲間入り」などと大々的に報道。ヒンズー紙は「イ ンド人民党指導部にとって、核実験は民族感情を利用する戦略の一 環」と狙いを指摘し、ナラヤナン大統領が実験に成功した科学者た ちを祝福した様子を紹介した。
また、核拡散防止条約(NPT)が不平等条約と批判されている ことや、国際原子力機関(IEAE)がインドの核実験を国際法に 違反しないと認めたことなどを記事にし、核実験の正当性を印象づ けている。
十四日付のタイムズ・オブ・インディア紙は、十三日の核実験に ついて「『ブラボー・インド』という夕刊紙の見出しがすべてを言 い尽くしている」と、再度の実験成功を歓迎。社説では、この核実 験で、米国が開発に精力を注いでいる超小型核兵器の開発にもイン ドが成功したことに触れ、「どんな国も他国を従わせる権利を持た ない」と、諸外国による経済制裁の動きをけん制している。
【パキスタン】
十一日のインドの核実験について、十二日付のパキスタン各紙は 「国際世論への挑戦」などと非難した。中でも同日付のドーン紙 は、パキスタンの「核開発の父」と呼ばれるアブドラ・カーン博士 の「恐れることはない。政府が決めれば、パキスタンだって核実験 はすぐにできる」とする発言を紹介。インドへの対抗心をあらわに した。
十三日付のドーン紙は社説で、「国際社会はインドの核開発の動 きにほとんど関心を示してこなかった」とし、米国がパキスタンに 核実験の自制を求めている点については、核の脅威にさらされてい るパキスタンを「インドと同等に扱うのは不公平」と、不満を表明 した。
十三日には首都イスラマバードで、シャリフ首相や軍最高幹部、 カーン博士らが出席して内閣国防委員会が開かれた。十四日付の各 紙は同委員会でのシャリフ首相の「パキスタンはいかなる脅威にも 対抗できる用意が整っている」との発言を大きく報道するなど、国 民の士気高揚を図っている。
一方でニューズ紙は、インドの反核運動の弱さに触れた記事も掲 載。「CIA(米中央情報局)のスパイと思われた」「インドは貧 しく、民衆は反核運動どころではない」とするインドの反核運動家 の嘆きを紹介し、ライバル国の内情も伝えている。