「国際世論を無視」被爆者団体ら強い憤り

'98/5/14

 インドが三日と置かずに二回目の地下核実験―。衝撃的なニュー スが十三日夜、広島を駆けめぐった。「ヒロシマの訴えや国際的な 非難を無視した暴挙」。一回目の抗議行動を繰り広げたばかりの被 爆者団体や平和グループは強い憤りをあらわにした。

 「ヒロシマを語る会」の原広司代表は、ちょうど中区内のホテル で富山県からの修学旅行生に語り部活動をしている最中だった。 「いかなる事情があれ、核兵器は人類に対する絶対悪。腹が立って しょうがない」と憤慨。「二十一世紀は核のない世界を築いてほし い」と、子どもたちに語りかける声に力を込めた。

 広島県被団協(伊藤サカエ理事長)の近藤幸四郎事務局次長は 「多くの市民の命を奪った核兵器を、国際政治の道具として利用す る姿勢に断固、抗議する」とぶ然とした表情。もう一つの同県被団 協の金子一士理事長も「世界から非難を受けながら国際社会に挑戦 する姿勢は、決して許せない」と唇をかんだ。

 原爆慰霊碑前で十二日、平和のリボンを掲げて抗議した「ヒロシ マ・平和のリボンの会」代表で被爆者の渡辺美代子さん(67)は「国 家の狂気。原爆の怖さを理解していないとしか言いようがない」。 十四日朝、再び抗議行動をする。

 広島県原水禁はインドの市民グループと連携するため、インドへ の代表団派遣の検討を始めた。坂本健事務局長は「憤りを越えた心 境。日本政府がもっと強い抗議の姿勢を示すよう働きかける」と語 気を強める。

 広島県原水協の藤田厚吉代表理事は「言うべき言葉も見つからな い」と嘆きながら、「核軍縮に向けてイニシアティブを発揮してい た国だっただけに、裏切り行動は許しがたい。世論づくりに力を入 れなければ」と国際的な原水禁運動の立て直しを強調した。

 平和団体には、インド政府への不信感が募る。核戦争防止国際医 師会議(IPPNW)日本支部長の真田幸三・県医師会長は「核大 国の論理に立ち向う手段をあらためて考え直したい」。今年十二月 に開く世界大会で、核保有国の医師と連携し、核実験禁止の取り組 みを主要テーマにする考えを示した。

 市民グループ「プルトニウム・アクション・ヒロシマ」の大庭里 美代表は「インドが核物質や製造技術をどこから入手しているか、 明らかにさせなければ」。現行の核拡散防止条約(NPT)体制の 不備を批判した。


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