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あの日 |
癒えぬ痛み「後がない」
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![]() 惨状を今に伝える原爆ドーム(広島市中区)を前に、被爆者三人の記憶が生々しくよみがえる。その「伝言」を聞き漏らすまいと、若者三人が耳を澄ませる。 ドームの写生を続ける原広司さん(73)、証言活動を重ねる寺前妙子さん(74)、被爆者団体の世話役を務める坪井直さん(79)。心も体も傷つけられた「あの日」の痛みは癒えない。 小学校教諭の大下あすかさん(29)、大学三年の久保美幸さん(20)、高校一年の石田一裕さん(16)。大なり小なり平和の問題にかかわってきた。自分の言葉で「ヒロシマ」を伝えることが、いかに難しいかを肌で感じてきた。 「わしらには後がないんじゃけえ、もう切羽詰まっとる」。被爆者から悲鳴に似た声がこぼれる。六十年前を境に一変した人生に、若者たちは圧倒された。沈黙し涙した。「もっと聞き、伝えたい」。決意も漏れた。 冬の木漏れ日が差す平和記念公園を六人は歩いた。老いた被爆者と若者と、人影が寄り添う。約五時間の対話が続いた。 |
【写真説明】被爆60周年―。原爆ドームを背に被爆体験を語る左から坪井さん、寺前さん、原さん。耳を傾ける、中央から久保さん、石田さん、大下さん |