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2002/08/08
―在韓被爆者支援に携わるきっかけは。 高校の教員をしていた一九七一年、教育研修で韓国を訪れた。韓国原爆被害者協会の副会長に会い、被爆者の窮状を聞いた。日韓両政府とも援護策を講じず、被爆者は貧しい生活の中で満足に医療を受けられないという。植民地時代に日本に渡り、原爆に遭った人ばかり。「何とかしないといけない」という思いがわいた。 ▼厚かった政府の壁 ―孫振斗さんが日本で治療を受けようと不法入国したのが、その前年でした。 最初は、被爆者の証しである被爆者健康手帳を取ることさえ大変だった。孫振斗さんが起こした裁判が原点といえる。最高裁で、どんな入国であれ日本国内にいれば手帳が交付されるという判決が出て前に進んだ。 とにかく裁判の連続で、少しずつ積み上げてきた。裁判せずに解決できればよかったが、日本政府の壁は厚かった。 ―昨年、被爆者援護法適用を認める判決が大阪、長崎両地裁で相次ぎました。 「在外被爆者にも援護を」と日本政府に訴えても進展が見られないから、提訴するしかなかった。原告は韓国人だが、ブラジルや米国の被爆者も証言に立ち「在外被爆者全体の問題だ」と訴えるなど協力した。 しかし、勝訴しても日本政府は控訴した。裁判は長い時間がかかる。 ―政府は本年度、約五億円の支援事業を始めています。 被爆者健康手帳の取得や渡日治療の渡航費助成など、来日を前提にした事業ばかりで、海外の被爆者は反発している。最も近い韓国でも、寝たきりの被爆者は日本に来れない。援護を一番必要とする人が抜け落ちる。「日本に呼ぼう」という発想はやめた方がいい。 ―では、何から始めるべきでしょうか。 国は現地を訪ね、被爆者の願いに耳を傾けるべきだ。被爆者が年老い、病人が多いことを考えれば、それぞれの国で十分な医療が受けられる体制を整えるべきだ。具体的には、医療費を補助するための基金を拠出すべきだ。九一、九三年に韓国に計四十億円を出したように先例はある。 ▼言葉より行動望む ―坂口力厚生労働相は「今回は第一弾。次もある」と繰り返し発言しています。 同じことを言うばかりで何も見えないから、不安が強まる。現在の事業を早く方向転換し、次の段階に踏み込むべきだ。 ―被爆地の役割は。 広島、長崎両市は本年度、在韓被爆者の理解を得ようと韓国に職員を派遣し、現地の事情を見聞きしている。国に言いにくい面もあろうが、在外被爆者の思いを代弁してほしい。少なくとも五億円の事業については「今のままでは予算が宙に浮く」ということを国に伝えてほしい。 ◇ ◇ 日本を離れて暮らす在外被爆者に今、どんな援助が必要とされるのだろうか―。国は昨年十二月、被爆者健康手帳取得のための渡航費補助などの支援策を打ち出したが、それぞれの居住国での治療や、日本の被爆者と同様の各種手当を受けたいと望む在外被爆者は多い。南米、北米、朝鮮半島のルポに続き、在外被爆者支援にかかわってきた関係者に提言を聞いた。
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