京都市で開かれていた国連軍縮京都会議(国連軍縮局、国連アジア太平洋平和軍縮センター主催)は九日、総括的な討論を行い、三日間の日程を終えた。テロ防止につながる軍縮や国際機関の役割などを確認した。
軍縮とテロとの関係について、日本の猪口邦子・ジュネーブ軍縮会議大使は「テロの根本的な解決のためには軍縮が不可欠。軍事費を削減し地域の開発に充てれば、やがて民主主義が形成され、最終的に敵対者同士が和解できる」と強調。さらに米ロ二国間から多国間での軍縮、軍備管理への転換の必要性を挙げ、機能停止状態にあるジュネーブ軍縮会議の積極的な活用を呼び掛けた。
次いで、四人がこれまでの討論をまとめ、核物質の管理や小型武器の規制強化などを報告。議長を務めた石栗勉・国連アジア太平洋平和軍縮センター所長が「米中枢同時テロ後、世界には新たな国家連合的な秩序が生まれつつある。会議の成果を今後の軍備管理、軍縮交渉に役立て、反テロの国際的な協力体制をつくりたい」と総括した。
▽解説 軍縮こそテロ防止 貧困や不平等の解決必要
一九八九年以来、十四回を数えた今回の国連軍縮会議の最大のテーマは、昨年九月に起きた米中枢同時テロ事件が核軍縮や世界の安全保障にどのような影響を与えているかを検証することだった。と同時に、国際テロ組織とどう戦い、核物質の安全管理や軍縮をいかに進めるか、その方策を探ることにあった。
三つの全体会議で、各国の専門家や外交官らが提出したさまざまな角度からの詳細な分析リポートは計十七点。それを基に活発な議論が交わされた。
参加者のほぼ一致した見方は、ブッシュ米政権によって既に後退していた核軍縮の歩みが、昨年のテロ事件によって一層後退したとの認識である。
会議では、核軍縮を進めることと、テロリズムと戦うことは矛盾するものではないとの指摘が多くなされた。むしろ、二国間、多国間の軍縮を着実に進めることが、世界の世論をつなぎ、国際テロリスト活動防止に役立つとの指摘である。
テロ組織撲滅のための軍事力行使については、「使用すべきでない」「使用しても国連の手続きを踏むべきだ」など意見が分かれた。が、飢餓や貧困、社会的不平等などの根本的な原因を無くすための方策なしに、軍事力だけではテロがなくならないとの考え方では共通していた。
従来の会議では、ミサイル防衛(MD)をめぐって米国とロシア・中国などの対立が際立ったり、一方的な意見発表に終わったりすることが多かった。が、今回は国際テロへの対処が主要なテーマとなったため、こうした対立点はほとんど表に出なかった。財政難のあおりで参加者が十二カ国、約四十人と従来の約三分の二に減ったことで、逆に全員が討議に参加し、議論が深まった面もある。
とりわけ、今年五月にジュネーブ軍縮会議大使に就任した猪口邦子氏の発言や行動には、軍縮に取り組む熱い意気込みが伝わってきた。今後の活躍に期待したい。(編集委員・田城明)
|